【イオニュース PICK UP】「制度的無年金」、意義のある議論を 在日外国人無年金者の救済求め
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在日外国人無年金障害者たちの救済をもとめ、9月5日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で当事者らが厚生労働省担当者に要請した。「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(以下、全国連)の李幸宏代表をはじめとする当事者および支援者たちが参加した。大石あきこ衆議院議員(れいわ新選組)が同席した。
1982年、日本の国連・難民条約加入に伴う法改正により国籍条項が撤廃されて以降、在日外国人にも社会保障を受ける権利がもたらされた。しかし、日本政府が経過措置を取らなかったことにより、「朝鮮・韓国」籍を持つ在日外国人高齢者・障害者のうち一部が無年金状態となり、現在も厳しい生活を強いられている。その多くは植民地時代に日本に渡ってきた1世、2世たちである。
当事者らが厚労省を訪ねたのは昨年12月以来9ヵ月ぶり。
今回、要望した内容は3点。
▼現在無年金状態にある在日外国人障害者(=1962年1月1日以前生)に障害基礎年金または障害基礎年金額相当を支給すること、▼現在無年金状態にある在日外国人高齢者(1926年4月1日以前生)に対して老齢福祉年金または老齢福祉年金額相当を支給すること、▼上記の対象者らについて実態調査をすること―だ。
そして上記に加え、人種差別撤廃条約の内容及び2018年8月30日、在日コリアンに対する差別是正などを指摘した人種差別撤廃委員会による勧告についてどのように受け止めているのかを説明すること、在日無年金障害者・高齢者が国籍条項によって加入を拒まれてきた自己責任のない「制度的無年金者」であることを認めるか否かについて説明することなどを求めた。
この日の要請では、事前に提出した要望書の内容に対して厚労省担当者が回答し、この回答を持って意見交換が行われたが、厚労省の担当者からは、「法改正(1982年の国籍条項の撤廃)の効力は将来に向かってのみ発する。…これに関しては過去、最高裁でも違憲性がないと判決が出されている」「我が国の年金制度は拠出した保険料に応じて年金を支給することを原則としている。これを踏まえて慎重に検討する必要があり、現在では結論に至っていない」「現状の実施調査を行うことは困難」と繰り返した。
当事者と厚労省担当者間の交渉はこれまで幾度と行われてきたが、議論は平行線をたどっていた。今回も、「話し合い」には至ったものの、結果的に前回の主張を踏襲する形で回答された。
当事者たちからは「いちばん大切なのは、拠出した保険料に応じて年金を支給するという社会保険方式を、在日無年金者の救済措置をとらないことの言い訳にするのをやめること。在日(コリアン)は、制度に入れるのに入れなかった、保険料を『払いたいのに払えなかった』制度的無年金者だ」と声が上がったほか「私たちは年金制度で差別されている。年金法を改正して、年金として受給できるよう救済すべきじゃないか」「原則がどうこうとか、最高裁判決云々の話ではない。政府がやるか、やらないの問題だ」と指摘があった。
紹介議員の大石あきこ議員は「制度の設計によって大きく人生が変わってしまう人がいるということがこの国の中であってはならない。私たちの社会の背景でこのような方がいることにしっかり目を向けなければいけない」としながら、「在日朝鮮人の方々は、望まずに日本に連れてこられた人、あるいはその子孫たちだ。その人たちからあえて国籍をはく奪し、国民皆年金という行政差別を行った過去から目を伏せてはいけない。今、この国は筋を通していくべき。『差別はアカン』と言っている人はこの国の宝ではないか。制度を変えていくというところに、ともに進んでいかないか。やらない道理はない。理屈的にはやらないならそれは差別だ」と厚労省担当者らに呼びかけた。
この日の要請内容は、担当者が持ち帰り再検討されることとなった。
当事者たちは年内にも再度、厚労省を訪れ、交渉を行う予定である。(文・写真:李鳳仁)
参考記事=朝鮮新報https://chosonsinbo.com/jp/2020/10/10-25/