【イオニュースPICK UP】朝鮮学校の権利のために 立川で子どもの人権勉強会&シンポジウム
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「子どもの『人権』勉強会&シンポジウムinたちかわ」が10月20日、立川RISURUホール(立川市)で行われ、在日同胞、日本市民ら242人が参加した(主催=子どもの「人権」勉強会&シンポジウムin立川実行委員会)。
集会には、上村和子さん(国立市議会議員、ハムケ・共に、都議会勉強会実行委員会事務局)、金チャドルさん(西東京朝鮮第1初中級学校校長)、前川喜平さん(元文部科学省事務次官)、河野詮さん(日本国民救援会立川支部長、立川9条の会、立川革新懇事務局員)、木村真実さん(日野・子どもと家族法律事務所)が出演した。
まず、主催者を代表して河野詮さんが挨拶した。河野さんは自身が所属している立川革新懇(平和と民主主義・豊かな暮らしを求める立川懇話会)で朝鮮学校への公的補助金が打ち切られている問題が提起され、広く市民に訴えて解決する必要性もあり、実行委員会を立ち上げて今日の集いを開催したとのべた。また今回の勉強会とシンポジウムは直接的には朝鮮学校への公的助成金の1日も早い復活を目指したものであり、また人権後進国日本の現実を改善しようとするさまざまな取り組みを構成するための集いでもあるとのべた。また河野さんは日本社会で起きているさまざまな差別について言及しながら「日本が差別のない未来へ進むには、歴史を正しく学び、朝鮮の人々への差別意識を日本社会が全体として克服することが避けられない課題だと思う」とのべた。最後に河野さんは今日の学習会が、1日も早い朝鮮学校への公的教育補助金の復活と、日朝交流の一層の発展のきっかけになるよう期待したいと語った。
またこの日は9月3日の立川市長選で当選した酒井大史市長も登壇し、挨拶を行った。
集会の第1部では前川喜平さんが「子どもの人権」というタイトルで講演を行った。まず前川さんは高校無償化からの朝鮮学校除外問題の経過について説明した。前川さんは民主党が2009年に政権を取る前の野党時代に作成した高校無償化法案について説明しながら、この法案の意義は全ての高等学校に通う生徒たちを対象に授業料の無償化を進めることだったとのべた。前川さんは「3年後の2012年には自公連立の安倍晋三政権に変わり、この時から文部科学省の下村博文大臣が無償化制度からの朝鮮学校排除を推し進めた」とのべながら「朝鮮総聯と朝鮮学校の関係性は『不当な支配』とは言えない」と強調した。
その後も政府によって朝鮮学校が地方自治体による補助金の支給対象や国の高校無償化制度から除外されてきたと前川さんはのべながら「朝鮮学校にお金を支給しない理由として、都民の理解が得られない、国民の理解が得られない、住民、国民の感情が許さないなどを挙げているが、これらの理由は差別や偏見を助長している。またコロナ禍における学生支援緊急給付金制度からも朝鮮大学校が除外された。朝鮮学校以外の高校課程に類する課程を持つ外国人学校は全て就学支援金の支給対象となっている。朝鮮学校の生徒だけが対象外なのは明らかに矛盾している。日本で朝鮮学校の子どもたちが民族教育を受けることは基本的人権の中に含まれる」と強調した。
前川さんは「日本政府は2021年に施行された東京都こども基本条例の中でも引用されている子どもの権利条約に沿って朝鮮学校の児童・生徒たちが自身のアイデンティティを保つための権利を保障し、彼らが朝鮮の文化、言葉、歴史を学ぶ権利(学習権)を保障するための政策を進めなければならない。条例に『全ての子どもが』と記載があるため、国籍は関係なく、朝鮮学校の子どもたちは必ず対象に入る」と語った。
第1部に続いて、第2部ではまず在日朝鮮女性たちのコーラスグループ・「コールハナ」、「いろそら!合唱団」、合唱団「あすをひらく風」による合唱が披露された。
次にシンポジウムが行われ、上村和子さんをコーディネーターに、前川喜平さん、金チャドルさん、木村真実さん、河野詮さんの5人が出演した。出演者たちは前川さんの講演に対する感想をのべた。そのほかにもシンポジウムでは、在日朝鮮人が日本国内で民族的アイデンティティを持ち続ける重要性や、子ども基本法などの子どもたちの人権を守るための法律や条例の意義、立川にある西東京朝鮮第1初中級学校と市民の関係性、立川市民から見た同校の存在意義などさまざまなテーマで議論が交わされた。
勉強会&シンポジウムの最後には西東京朝鮮第1初中級学校のオモニ会副会長を務める金明奈さんと行事実行委員会の事務局長である小林光さんが挨拶を行った。
参加者のコメント
小林一利さん(75)
「前川喜平さんの講演で出た、一部の政治家による朝鮮学校への差別意識の問題性や『都民の理解が得られないという理由が偏見、差別を助長している』という意見に共感できる部分が多かった。今日の勉強会&シンポジウムを主催した方たちが朝鮮学校のために頑張る姿を見て、感銘を受けた。今後も自分が所属するトングラミ(給食支援ボランティアの市民団体)で子どもたちのために活動を続け、同時に在日朝鮮人の方々との関係構築も精力的に行っていきたい」。
厳蘭姫さん(56)
「今日の勉強会&シンポジウムを開催するなど、日本人有志が朝鮮学校やそこで学ぶ児童・生徒たちの権利のために頑張る姿に感動した。朝鮮学校の児童生徒数の減少が深刻な問題だが、今日の集会参加を機に自分が所属しているオモニ会内部でもこのような日本人有志の活動があるということを積極的に共有して、今後も朝鮮学校の児童・生徒数を増やす活動などオモニ会でも朝鮮学校のための活動を頑張っていきたい」。
文・写真:金盛国