【イオニュースPICK UP】“なにより交流、子どもたちのために”/ 東京第6初級で公開授業
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“ホームページを見て来ました”
地域の人たちに朝鮮学校を知ってもらおうと10月28日、東京都大田区の東京朝鮮第6初級学校(金炳虎校長)で公開授業が行われ、大田区議会議員、東京都議会議員、区内の公立小学校校長、東京郊外や千葉から48人の日本市民らが参加し、同校の教職員や同胞たちと交流した。
公開授業は昨年に続くもので、2020年8月に結成された市民団体「だいろく友の会」(以下、「友の会」)からも積極的に声がけをした結果、「ホームページを見て初めて来ました」と話す学生や20代の姿もあり、主催者からは喜びの声があがっていた。
10時から始まった公開授業では、幼稚班の3クラスと初級部1年から6年までの授業が公開された。
初級部1年の国語(朝鮮語)にはじまり、初3社会「世界を旅しよう!」、初4算数「足し算と引き算」、初5社会「源頼朝と鎌倉幕府」、初6社会「科学技術の発展と様々な問題」などの授業が公開された。オモニ会やアボジ会のメンバーが来訪者の案内係をつとめ、授業内容や学校生活について、それぞれの質問に丁寧に答えていた。
歓迎のあいさつをした金炳虎校長(51)は、「国家の間に難しい問題はあり、高校無償化や都の補助金制度から朝鮮学校が外され、実際の学校運営は大変です。ただ、子どもたちが楽しく過ごせたらそれでいい。草の根の相互交流、相互理解に尽きると思う」と自らも日本学校に積極的に訪れたいと意欲を語った。
11時からは園児と児童たちが歌や朝鮮舞踊を披露。10月の芸術競演大会で優秀作品に輝いた朝鮮舞踊「歓喜」は、サンモを軽快に回し、チャンダンのリズムを太鼓で奏でながら踊る三人舞。のびのびと民族の舞踊を踊る姿に、会場からは大きな拍手が送られていた。
大田区立小学校校長も参加
続くは教員や保護者を交えての懇親会。5~7人のグループに分かれて当日の感想や朝鮮学校の印象、「知らないこと」を吐露しながら、民族教育への理解を深めていた。
西崎つばさ・都議会議員(立憲民主党)は、2010年から東京都が都内の朝鮮学校への補助金を停止している問題をどうにかしたいと話す。
「議会でも明確な基準がないまま、朝鮮学校だけが補助金の対象から外されていて、どうにかしようと働きかけてきた。都の『東京都こども基本条例』があるので、これをしっかり力にして、子どもたちの学びを支えてきたい」と決意を語っていた。
1994年から同校と毎年、交流を続けてきた大田区立の小学校校長は、「幼稚班から初級部6年まですべての授業を見せてもらったが、授業のゴールがイメージされ、5年生の授業では日本の歴史を学ぶ様子が新鮮だった。6年生は科学の発達という難しい内容だったが、子どもたちの興味をどう次につなげていくのかにも興味が沸いた。驚いたのは歌と踊りのレベルの高さ。11月に本校で音楽会があり、朝鮮学校からも来ていただくので、本校の子どもたちに奮闘するよう、今日の話をしたいと思う」と感想を語っていた。
また、他の区立小学校の校長は、「算数の授業を見ていた。言語が違っても、授業の流れやどこで落とし込むのかがわかった。少人数学級の授業といっても、授業言語は母語の日本語ではなく朝鮮語なので、言葉の意味を理解できない子どもに先生方が日本語でフォローする場面を見ながら、一人ひとりに理解させようと努力する先生方の思いを知った」と感想を語っていた。
「だいろく友の会」、12月9日には初の給食
「友の会」の鎌田浩宮事務局長は、2019年の公開授業を東京新聞で知り、同校を初訪問。それから会の立ちあげに関わり、絵本を寄贈したり、同校のホームページhttps://www.tokyoche6.ed.jp/を作成し、学校を支えてきた。それだけに、「ホームページやフェイスブックを見て、公開授業に来ました」という反響に喜びを隠しきれない様子だった。
「友の会」は最近、多忙な教職員にかわって大田区立図書館が団体に月100冊の書籍を貸し出す「団体貸出制度」を申請。図書館を訪れ、大型絵本や図鑑、子ども向けのDVDを借り、返却も行っている。
12月9日には、「友の会」が東京第6の子どもたちに、初めてカレーライスの給食を作るとのこと、公開授業の場では手伝いを募集するチラシも配られていた。
また、2024年2月2日18時半からは、東京・大井町のきゅりあんで、東京都こども基本条例から朝鮮学校の子どもたちの学びの現状について考え、話し合う集会が開かれる。主催は、「すべてのこどもに差別のない未来を・東京南部の会」だ。東京朝鮮第6初級学校を支える輪が静かに、着実に広がっている。(文・写真=張慧純)