【ニュースPICK UP】同胞社会の精神世界を絵で表現 クリム展2023
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若者からベテランまで
「第1回張留美展」を名残惜しくも後にし、2階へと上がると、そこでは在日同胞美術家、美術愛好家たちが集う2年に1度の「クリム展2023」(主催=同実行委員会)が開催されていた。「クリム(丘林)」の名には、朝鮮半島を表す雅号の「青丘」と、若い美術家たちが「林」の木々のようにたくさん育つようにとの思いが込められている。
20代から80代までの同胞美術家たちが集い、油絵、水彩画、朝鮮画、写真、コンピューターグラフィックと多岐にわたる作品群を展示した。
「祖国が統一されたら、白頭山から漢拏山までずっと訪ねて風景を描きたい」。そう願いを語ってくれたのは、当初からクリム展開催に携わってきた高石典・茨城朝鮮初中高級学校校長だ。高さんは1986、87年に祖国・朝鮮民主主義人民共和国で朝鮮画の技法を直接習った経験、実際に何度も現地を訪れて書いたスケッチや撮影した写真に基づいて、これまでさまざまな風景画を描いてきた。絵具も祖国でつくられたものを使用。今回は「牡丹峰」「妙香山下毘盧庵渓谷」「妙香山下毘盧庵」を出品した。
高さんの願いがひしひしと伝わり、より作品世界に没入した。朝鮮高校の祖国訪問で実際に現地を訪れた記憶がよみがえり、また訪れる日がさらに待ちきれなくなった。
高さんの展示からずっと見ていると、隣にポップな絵が現れた。金セッピョルさんの「梅雨」「キムチ作り」だ。
「キムチ作り」は、いろいろな食材が入り、壺の中で寝かされて味が染みていきキムチが作られていくようすと、朝鮮学校で民族教育を受けてさまざまな経験を重ねることによって、民族性が体に染みていき朝鮮人として育っていくようすを重ねて描いた。28年間、朝鮮学校の美術教員を務めて実際に子どもたちと接してきた金さん。自分がこれから何をテーマに創作活動をしようかと考えた時に頭の中に浮かんだのはやはり、民族教育と児童・生徒たちだった。かわいらしいポップな絵の中に染み込んだ力強いメッセージを感じる。「キムチ作り」は11月の絵で、隣に並ぶ「梅雨」が6月。金さんは、「12ヵ月分のテーマで描いて、いつかそれをカレンダーにできれば」と目を輝かせた。
人が集まる場
20年以上続くクリム展では同胞作家たちが作品を通してメッセージを伝えてきた。作品の展示のみならず、作品について意見を交えたりできる開放的でアットホームな雰囲気となっている。
「文化活動とは人が集まり出会う場をつくることである。そこで刺激を受けて前に進んだり、新たに創造することができる」と語ってくれたのは、この日筆者を案内してくれた尹忠新・在日朝鮮文学芸術家同盟中央委員長だ。尹委員長は、「同胞社会の感情世界を描き出そうとする作家たちの力がここに集まっている。芸術を通して同胞社会に貢献しようとする力をひしひしと感じる」と感嘆の声を上げる。そのうえで、「ここに来れば在日朝鮮人の生活をすべてわかるだろう」としながら、「クリム展をさらに宣伝して日本の方々にも伝えていきたい」と話した。