【ニュースPICK UP】 13年つづく差別、“悔しい” 「金曜行動」が500回
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2013年から週1回
東京都小平市の朝鮮大学校生が「後輩のために」と2013年から始めた文部科学省(東京・虎ノ門)前の「金曜行動」が12月15日、500回目を迎え、朝大生約300人を含む同胞、日本市民ら約500人が13年たっても実現しない朝鮮高校への高校無償化適用を訴えた。
東京朝鮮中高級学校教員の鄭燦吉さんは、「無償化制度が始まる前、朝高も対象になると聞き、保護者たちとともに喜んだことが思い出される。文科省の担当者は私に『朝高は大丈夫だ』と答えたが、次に会うときに担当者は変わっていた。朝高を除外し、差別という言葉を覚えさせた大人は一体何を考えているのか。この国の政治で誰が幸せになるのか。私には4人の子どもがいるが、日本政府から一銭たりとももらっていない。(政府は)ずっとここにいる私たちに目を向けてほしい」と訴えた。
朝大3年生の趙智久さんは、「人間としての権利の保障に犠牲を払わなければいけないことを不当といわずなんというのか。日本政府は、差別を放置すれば、いずれは私たちが消えると思っているがそれは違う。民族教育こそ私たちの存在証明。在日朝鮮人の神聖な権利だ」と訴えた。また、今春に九州朝鮮初中高級学校を卒業した陳悠那さん(朝大政治経済学部1年)は、「文部科学省前に立ち続ける私たちの気持ちがどれだけ悔しいことか、わかりますか?」と問いかけ、「私は朝鮮学校、同胞社会を守るために、力を尽くす人になりたい」と決意した。
国会からは大椿ゆう子・参議院議員(社会民主党副党首)が連帯のあいさつに立った。「政治家たちに皆さんの姿は見えていない。朝鮮学校があることの重みを理解せず、補助金をカットした大阪府から差別は始まった。あなたたちの長く、しんどい闘いに怒りを覚える政治家がいることを忘れないで」と激励した。
朝鮮学園を支援する全国ネットワーク代表の藤本泰成代表、東京朝鮮第5初中級学校を支援する会の藤野正和代表も連帯のあいさつをのべ、参加者たちを激励した。
朝大生たちは、約1時間にかけて「文科省はすべての子どもたちに学ぶ権利を保障しろ!」などとシュプレヒコールを叫び続けた。この日の司会を担当した、朝大3年生の金載成さんは、「金曜行動に参加したのは中学生の頃です。500という数字にまた新しい闘いが始まるという思いがこみあげた」と話す。「文科省は多極化が進むこの世界でいつまでこのような差別を続ける気なのか。世界に通じない差別をなぜ止めないのかを問いたい」
歴史否定、朝鮮学校差別に対する憤り
「金曜行動」に先立ち、朝鮮大学校生、市民団体をはじめとする同胞、日本市民らが、文科省を訪れ、朝鮮学校への「高校無償化」「幼保無償化」の適用を求める要請活動を行った。水岡俊一・参議院議員が同席し、文科省の高等教育局学生支援課、初等中等教育局修学支援・教材課、同局幼児教育課、大臣官房国際課の職員が応対した。
市民団体による岸田首相と文部科学省大臣あての要望書は、朝鮮学校に対する差別の即時是正と公的助成の保障を求めている。事前に渡された要望書に対し、文科省職員は「朝鮮学校は、法令に基づいて定められた審査基準に適合せず、就学支援金制度の対象に規定されていない」「国連人権委員会の日本に対する審査の勧告については、法的拘束力を持つものではない」などと朝高生の学ぶ権利を無視する回答に終始した。
朝鮮学校学生委員会も岸田首相、文部科学大臣あてに要望書を提出。要望書では、▼朝鮮学校生徒に「高校無償化」、朝鮮学校幼稚園に「幼保無償化」、朝鮮大学校学生に「高等教育の就学支援新制度」を適用すること、▼「朝鮮学校に関わる補助金交付に関する留意点について」を撤回し、朝鮮学校に対する地方自治体助成を奨励すること、▼朝鮮学校の歴史と現状をふまえ公平に扱うことを求めた。
席上、李泰輝さん(朝大政治経済学部2年)は、100年前の関東大震災朝鮮人虐殺に対して日本政府の真相究明や謝罪がないこと、そして今も続く在日朝鮮人の教育権、人権を侵害する行為に「強い憤りを感じる」とし、「こども基本法から見ても朝鮮学校の排除は不当であり、そのような日本政府による差別的行為を即刻是正すべきだ」と訴えた。
また、金香美さん(同学部3年)は、「朝高時代に自分たちが権利を獲得できていたら、後輩たちがこの場に立つことはなかった」と自責の念を示しながら、「あと何回でも権利を勝ち取るまで私は闘い続ける」と決意を表明した。
朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会の共同代表を務める田中宏・一橋大学名誉教授は、「(日本が批准する)人種差別撤廃条約、子どもの権利条約などの人権条約は、1948年の国連総会において『世界人権宣言』が採択されたことに端を発する(日本は1979年に批准)。国連人権条約機関でも朝鮮学校差別について散々議論されているなか、日本は人権を尊重するために一緒に国際社会を動かしていかなくてはならない」と強調した。(康哲誠、張慧純)