【イオニュース PICK UP】東京都知事宛てに17640筆の署名提出
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”子どもたちの声聴いて”
補助金支給再開求め
2010年から都内の朝鮮学校だけに支給が停止されている「私立外国人学校教育運営費補助金」(以下、補助金)の支給再開を求める都民署名運動を進めてきた日本の市民団体「『都議会勉強会』実行委員会」の代表たちが2月20日に東京都庁を訪れ、小池百合子東京都知事宛ての9408筆の署名を提出した。
東京都多摩地域の市民たちが中心となり、しだいに都内各所に広がった「『都議会勉強会』実行委員会」では、これまで「東京都こども基本条例」、朝鮮学校差別の現状を知るための地域学習会や地域集会、シンポジウムなどを20回以上開催し、世論喚起に努めてきた。都民署名は2023年10月20日に立川市内で行われた集会「子どもの『人権』勉強会&シンポジウム」で初めて提案され、同年11月から始まった。
この日、署名提出に先立ち、都庁前でアピール行動が行われ、地域で朝鮮学校を支援してきた市民たちが1時間のあいだ、道行く人たちに問いかけを続けていた。
トップバッターの松野哲二さん(チマ・チョゴリ友の会代表)は、2021年に全会一致で制定され、同年4月に施行された都の「こども基本条例」は子どもたちにとって画期的なものだったが、「この3年間、都は朝鮮学校の子どもたちの声に耳を傾けてこなかった」と前置きしながら、「都民署名は、こども基本条例から排除されている当事者である朝鮮学校の子どもたちの声を都に届ける画期的な『子ども署名』でもある」と話した。
在日朝鮮人人権協会の宋恵淑さんは次のようにスピーチした。
「朝鮮学校の子どもたちが政治的、外交的な問題を理由に就学支援金や補助金の支給から排除され、10年以上が経った。国や地方自治体による朝鮮学校の子どもたちへの差別、子どもたちの学ぶ権利の否定は、本当に悲しいことであり、一方で朝鮮学校の子どもたちへのヘイトスピーチなどが頻発している。都は朝鮮学校に対する差別をなぜなくせないのかという私たちの要請に『都民の理解が得られない』という言葉を繰り返している。しかしこの3ヵ月で集まった1万筆以上の署名こそが尊い都民の声。子どもたちを誰一人取りこぼすことなく、すべての子どもたちの学ぶ権利を平等に認めようというのがこども基本条例の精神であり、都民の声だ。東京都は今日集まった署名を真摯に受け取る必要がある。都民が朝鮮学校の子どもたちに対する差別をすぐに辞めさせるべく、共に声を寄せてくれることを保護者として切に願っている」
また、朝鮮学校保護者の権貞恩さんは、「私たちは特別なことを要求しているわけではない。納税義務を果たしている都民として、同じ権利が欲しいだけだ。朝鮮学校へ通う児童・生徒たちは自身のルーツを学びながら、アイデンティティを育てている。朝鮮学校の文化祭やスポーツ交流の場、授業公開などの場に、ぜひ足を運んでほしい」と呼びかけた。
都議会議員9人が激励
また、この日は日本共産党の都議会議員団のメンバー9人、西のなおみ・府中市議会議員がアピールの場を訪れ、激励のメッセージを伝えた。議員たちは、署名運動を通じて1万筆以上の署名が集まったことは素晴らしいことで、この運動が続いていることに感謝と敬意を表していた。
マイクを握った福手ゆう子都議会議員は、「こども基本条例には、子どもの最善の利益を確保すること、あらゆる差別を禁止することが義務付けられている。朝鮮学校の子どもたちの意見をしっかり聞き、それを都政に反映するのが重要だ。私たち議員たちは、条例を作った議会の責任として、子どもたちの最善の利益を確保するため、議会の中でこの問題を共有し、しっかりと取り組んでいきたい」と決意を語った。
昨23年から始まった都民署名。23年12月25日には、署名開始から1ヵ月あまりで集まった8232筆を東京都生活文化スポーツ局私学部私学共生課に提出した。
その後の12月26日から今年2月19日までは9408筆が集まり、この日、同課の福本卓也課長に提出された。
提出の場で上村和子・国立市議は、「総数1万7640人の思いがこもった署名を誠実に受け取り、都知事に届けてほしい。都知事は、子ども基本条例に基づいて朝鮮学校の子どもたちの声に真摯に応える義務がある」と切願した。この発言を受け福本課長は、「しっかり頂戴します。このような声が上がっていることを東京都に上げていく」と返答した。
生徒・児童、学生らの署名1011筆も
17640筆の署名には、都内の朝鮮学校に通う初級部、中級部、高級部の児童・生徒らの署名487筆、朝鮮大学校の学生らの署名524筆も含まれている。上村市議は、「子どもたちの声を無視してすべての子どもを取り残さないという綺麗事は通じない。私たち大人は1011人の勇気ある生徒・児童、学生が署名に託した大人に対する期待、世界に対する期待を絶対裏切ってはいけない。私たちは子どもを仲間外れにする大人を決して許さない。その覚悟をもって、本日都民署名を提出した」と語っていた。
署名提出後は、同実行委員会による記者会見も行われた。日本市民たちは今後も子ども基本条例、朝鮮学校差別の現状を知るための学習会や集会などを開催するなどして、引き続き東京都に朝鮮学校への差別是正を求める要請を行っていく。
文:金盛国、写真:張慧純