〝人権は何かの対価ではない〟/対談 安田菜津紀さん×金井真紀さん
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司会・まとめ:康哲誠、写真:崔麗淳
やすだ・なつき●1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト、メディアNPO法人Dialogue for People副代表。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害などの取材を進める。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ、2023年)など。TVやラジオにも出演している。
かない・まき●1974年千葉県生まれ。文筆家・イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を任務とする。著書に『日本に住んでいる世界のひと』(大和書房、2022年)など。今年6月には『テヘランのすてきな女』(晶文社)を刊行、本書でもハルモニの話が少し登場する。「難民・移民フェス」実行委員。
―4月に刊行された近著では外国にルーツを持つ4人を紹介しています。
安田菜津紀(以下、安田):2021年3月にウィシュマ・サンダマリさん(2章で紹介)が名古屋入管で亡くなられて、ご遺族が心をずたずたにされながらも発信し続けたことで入管の問題が近年大きく注目されました。しかし、短いニュースでは「なぜ」の部分がどうしても伝わらない。子どもから大人まで自分の隣人に何が起こってるのかを知るきっかけとなる一冊を作りたいと思い、イラストを金井さんにお願いしました。
金井真紀(以下、金井):私がお話を受けたのは昨年6月、改正入管法案が成立した直後でした。21年に入管法が改悪されてしまうという時期に難民の友だちができて、ようやく自分ごととして捉えられるようになって。当時は廃案になってよかったと思っていたら、2年後に同じような法案が出てきて成立してしまった。出版のお話をいただき私たちがふてくされている場合じゃないと強く感じました。
―本書の取材を通して感じたことは?
安田:これまでも「仮放免」の方々のお話は聞いてきたつもりでしたが、一人ひとり違った生活の中の苦しみがあると思いましたし、リアナさん(1章)の体験は衝撃的でした。子どもの頃、友だちと一緒に公園の中で遊んでいても自分だけ県境にある橋を渡れない。「なんでこっちに来られないの」と友だちに言われてもうまく言語化ができない。入管施設に収容されてしまわないかという恐怖だけが空気のようにまとわりついてくる。具体的に目の前で話を聞かせてもらうことで、「脅威」が自分の中でより立体的になっていくような感覚がありました。
金井:国連で難民と認められたのに、日本では認められずに祖国に送り返され、その後ニュージーランドに行くことができて難民になったというクルドのアハメットさんのお話(3章)や、元々入管は在日コリアンたちを取り締まるためにあったと歴史として知ってはいましたが、直接話を聞くことでこの問題は今始まったことじゃないと改めて実感しました。
安田:この前、小学6年生に感想のお手紙をもらったのですが、ウィシュマさんのことに特にびっくりしたみたいです。「日本にいる時間がちょっと延びただけで、そんなひどいことしていいの」と。
金井:すごいシンプルな疑問ですよね。
安田:でも本質はそこですよね。在留資格云々で、なんで人権まで剥ぎ取られたような扱いをされなくてはいけないのかということを子どもなりの落とし込み方で感じてもらえたらいいです。
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以上が抜粋です。記事の全文は本誌8月号でご覧ください。※本誌では、本記事が3ページにかけて掲載されています。
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