【イオニュースPICK UP】遺骨問題は人道上の問題/東京・祐天寺で朝鮮人戦争犠牲者追悼会
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第36回朝鮮人戦争犠牲者追悼会が8月22日、祐天寺(東京都目黒区)で行われ、追悼会世話人をはじめ在日同胞や日本市民ら約40人が参加した。
祐天寺の納骨堂には現在、「浮島丸事件」(※、1945年8月24日)の犠牲者、戦争で亡くなった朝鮮人軍人・軍属の遺骨700体が「仮」安置されている。そのほとんどが創氏改名によってつけられた名前のままだ。「この遺骨を一日も早くご遺族の許にお返ししたい」という想いで地元民を中心に1989年から追悼会を開催してきた。
この日、祐天寺本堂にて法要が営まれた後、その場で追悼会が行われた。世話人の代表あいさつからはじまり、目黒区長、厚生労働省、「浮島丸下北の会」(青森)、「浮島丸殉難者を追悼する会」(京都)から寄せられたメッセージが紹介された。その後、参加者らが発言した。発言者らは、遺骨の早期返還を嘆願したほか、今後とも追悼会に参加して犠牲者へ哀悼の意を表していくことなどを誓った。
その後、懇親会が開かれた。
世話人の小林喜平さん(70)は、「遺骨問題を日本と韓国の問題に矮小化してはならない」と強調する。
本籍地が朝鮮半島の南側である遺骨423体は、日韓の政府間合意に基づき4回にかけて正式に韓国に返還された。一方、日本政府はこれまでに、朝鮮民主主義人民共和国で暮らす遺族の入国を妨害・拒否し、本籍地が北側の遺骨を一体も遺族の元に返していない。
祐天寺に残存する700体の朝鮮人遺骨の内、南側の275体は浮島丸事件犠牲者であり、北側の425体の内5体は浮島丸事件犠牲者、4体はB・C級「戦犯」とされた刑死者である。
この日の追悼会にも参加したジャーナリストの布施祐仁さんの情報公開請求によって今年5月、日本政府が「存在しない」としてきた浮島丸の乗船名簿が厚生労働省に保管されていたことが明らかになった。それにより現在、資料の全面公開を求める声とともに、浮島丸事件犠牲者の遺骨返還への進展を期待する声も高まっている。
小林さんは、「浮島丸事件の南側の遺骨がこれから返還されたとしても、北側の遺骨は残ることになる。朝鮮と国交があろうがなかろうが、日本政府は人道上の問題として向き合うべきであり、北側の遺骨問題にも取り組んでいかなければならない」と話した。
浮島丸事件と関連して、同22日、青森・むつ市で追悼集会(主催=浮島丸下北の会)が行われた。また24日には、「浮島丸殉難79周年追悼集会」(主催=浮島丸殉難者を追悼する会)が京都・舞鶴市の「殉難の碑公園」で行われる。
(文・写真:康哲誠)