記憶継承の未来を創る 虐殺から101年、「百美+」が美術展
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関東大震災時の朝鮮人虐殺から100年を迎えた昨年は、虐殺の真相究明や責任追及を求める声がこれまで以上に高まった一方で、行政による虐殺否定の動きがかつてないほどあからさまになった。
千葉県在住の宋明樺さん(33)もまた、それを実感した一人だった。昨年8月から9月にかけて千葉県立中央博物館で行われたトピックス展「関東大震災から100年―災害の記憶を未来に伝える―」に足を運んだところ、虐殺に関する展示が一つもなく衝撃を受けた。
「今立ち上がらなければ」――。明樺さんは、美術の力で100年目以降に応答していこうと同じ志を持つ者たちに呼びかけ昨年9月、在日朝鮮人アーティストなど7人から成る実行委員会を発足。千葉県を拠点に置く「百美+」を始動させた。正式名称は「関東大震災朝鮮人虐殺から100年を迎えて千葉県の美術シーンを再考しそのあり方を模索するプロジェクト」。プロジェクトを進めながら目指してきたのは、トピックス展へのアンチテーゼとなる美術展を公的施設で行うことだった。
日常と虐殺、「フラットに」
趣旨文によると、関東大震災時に千葉県で虐殺された朝鮮人犠牲者は約360人とされている。
県内で虐殺が始まったとされる9月3日の1週間前の8月27日、会期をスタートさせた美術展「101・人」の会場はどこか生活感に溢れていた。「『百美+』では身近なものを使いながら対話が生まれるような工夫をしてきた」。そう語ってくれたのは実行委員の鄭優希さん(29)だ。これまで「百美+」では、読書会、学習会、フィールドワークやワークショップを行ってきた。船橋、習志野、八千代をそれぞれ巡った「flat(ふらっと)フィールドワーク」では日常と虐殺を「フラット」にし、虐殺を自分ごととして捉えた。美術展では、活動アーカイブとしてパネルが展示されたほか、実行委員らが自宅から持ってきたラックやクッションも設置され、落ち着いた空間が広がっていた。
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