差別的高校授業料無償化政策の 問題点と私たちの課題
広告

2025年3月7日、就学支援金の支給を求め、東京朝鮮中高級学校生徒(高1)たちが文部科学省に対面で要請した(提供=朝鮮新報)
石井拓児●名古屋大学教授
3月31日、2025年度予算が成立した。少数与党であった自公政権が、野党の日本維新の会の賛成を取り付けることで、年度末ギリギリで予算を成立させた。新聞報道等によれば、予算成立を目指していた自民・公明両党は、2月25日に日本維新の会(以下、維新の会)と党首会談を行い、①25年から公立私立を問わず、所得制限なしで年11万8800円を助成する、②26年度から私立高校生への上乗せ支給も所得制限を撤廃し、支給額を年45万7000円に引き上げる、といった内容で合意したとされる。
欺瞞のひとつめは、予算のあり方について、国会等の開かれた場での討論や質疑ではなく、議員数の数合わせを念頭においた密室での協議で決められたということである。このこと自体が、きわめて異常なことだということをまずは怒りをもって指摘しておきたい。欺瞞のふたつめは、2025年度予算の最大の特徴は、防衛費(つまりは軍事費)の突出した膨張ということにあるのだが、授業料無償化を防衛費・軍事費の爆上げと引き換えにして承認するなどということは考えられないということである。維新の会は、密室での自公との協議で、何らかのかけひきでも持ち掛けられたのではないかと疑いたくなってしまう。
欺瞞はこれだけにはとどまらない。私立高校生への「上乗せ支給」という問題について、もういちどよく検討しておく必要がある。
公立高校生の場合、授業料相当分(年額11万8800円)のみが支給対象であるのに対し、私立高校生の場合には、公立高校生の授業料相当分に加え、およそ30万円ものプラスの支給が受けられることになる。これが「上乗せ支給」の意味である。客観的に見て、このこと自体が非常に差別的な仕組みだと言わなければならず、公立高校生やその保護者には大きな不満が残るであろうと思われる。なぜならば、公立高校生の場合、授業料は無償化されたというものの、授業料以外の負担がまだかなりたくさん残されているからである。
…
以上が記事の抜粋です。全文は本誌2025年5月号をご覧ください。