「オモニパワー」がリードした運動~vol.3 JR通学定期券割引率差別の是正
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朝鮮学校児童・生徒の通学定期券が日本学校より高い―。旧国鉄時代から続いていたJRの通学定期券割引率の格差は1994年、26年ぶりに是正された。差別是正を求める運動は国鉄が分割・民営化されJRが誕生した1987年、千葉県から始まった。担ったのは朝鮮学校に子を通わせる母親(オモニ)たちだった。
第一歩は千葉から
「同じ学生なのに、なぜ朝鮮学校に通う子どもたちの定期券が高いの?」
運動の発端は、あるオモニが発した疑問だった。
JRの学割運賃制度が設けられたのは国鉄時代の68年にさかのぼる。それ以前は学校による運賃の区別はなかった。「家計負担の軽減」を目的として導入された割引制度は誰にも同様に適用されてしかるべきだったが、「学校教育法」に基づいて運賃が設定された結果、学校間で格差が生じた。通学定期運賃は大学生、専門学校生を含む大人を100とした場合、高校生はその10%、中学生は20%、小学生は65%の割引。しかし当局は朝鮮学校が「学校教育法第1条で定める学校(1条校)ではない」との理由から、12歳以上を大人扱いで割引ゼロ、それ未満は50%引きとした。千葉朝鮮初中級学校に通う子どもの場合、船橋駅から学校がある新検見川駅まで初級部で1ヵ月600円、中級部では1200円の格差が生じた。遠距離になるほどその差は大きい。この運賃体系は民営化後にも引き継がれた。