された方は覚えてる
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私が小学校高学年の頃、弟に向かって「善人そうな眉毛してるね~」と笑いながら言ったことがあります。特にからかうつもりもなく思いついたことを言ったのですが、「ぜんにん」の意味を知らなかった弟はバカにされたと感じて、その日の夜にお風呂で眉毛を剃ってしまいました。それまで剃刀なんて持ったこともないのに。半分ほど無くなってしまった眉毛を見て、オモニは悲鳴を上げていました。そして、なんでそんなことしたのと問いただすオモニに弟は一部始終を話したのです。私の軽い一言で弟が思い悩んだという事実にとても驚き、なんだかショックを受けました。
「次の日から油性ペンで眉毛を書き足して登校してたんだよ」と、今だからこそオモニは笑って話します。私もついつい吹き出してしまうものの、その時は悪いことをしたな、と少しだけ苦い思いがよみがえります。
もう一つ同じような失敗があります。これも被害者は弟。結構マメな性格の弟は、例えば入学試験や、なにかの大会や、誕生日には必ずメールをくれていました。ある時(それがなんだったかは忘れてしまいました)メールが来なかったことを、後になって冗談交じりに伝えたことがあります。「○○だったんだよ! 忘れてたでしょ。待ってたのに」のようなニュアンスで…。
この言葉に対しても相当ショックを受けていたらしい、という話を後になってオモニから聞いたとき、「またやっちゃった」と反省しました。何の気なしに発した一言でも、自分と相手とでは受け取る重みが全然違う場合があるんですね。
先週末、弟が東京に遊びに来ていました。3ヵ月ぶりに会い、少し整えられた眉毛を見て「おっ」と思うと同時に冒頭のエピソードを思い出したのでした。よく「されたほうはいつまでも覚えている」と言いますが、弟はどれほどの重さでそれらのことを記憶しているのでしょうか。まだ結構、引きずっているんだったら謝りたい。(理)