後悔の先に立つ行動経済学:転ばぬ先の杖を手にしよう
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康明逸●朝鮮大学校経営学部助教
ダイエットにあえなく挫折してぽってりとしたお腹を恨めしげに眺めたり、若いころ覚えたたばこやお酒、ギャンブルのような悪習となかなか縁を切れず、「これがないと人生つまんないんだよね…」と自己慰安してはいないだろうか。経済学では近年、一見非合理と思えるような人々の行動に焦点を当てて、それを誘発するメカニズムを明らかにする研究が精力的に行われている。行動経済学と呼ばれるこの分野では、数学、社会学、心理学、脳科学、生物学などといった幅広い学問領域における知見を経済学に取り込みながら、人々の意思決定の絡むあらゆる事象に肉薄している。
筆者は行動経済学の中でも、特に「異時点間選択」と呼ばれる、人々の時間をまたぐ意思決定に関わる分野を専門としている。異時点間選択とは、計画の必要となるような現在から将来にわたっての意思決定や、現在の行動の帰結が時間の経過した将来に現れる選択のことである。体格形成、中毒財消費、美容や医療行為、健康投資や貯蓄負債行動など、その分析対象を挙げればきりがない。