明日は朝鮮高校の卒業式/神奈川の高3、補助金支給再開を訴える
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神奈川県の黒岩祐治知事が、神奈川朝鮮学園に対する2016年度の保護者補助金の支給を留保し、17年度予算案の計上を見送ると発表した問題で、卒業式を3日後に控えた3月2日、神奈川朝鮮中高級学校3年生全員が県庁私学振興課を訪れ、補助金支給を求めた。
高3の生徒5人と教員2人が私学振興課の職員3人と35分ほど面談。他の生徒たちは県庁前でプラカードを持ちながら道行く人たちにアピールした。
面談の席上、高3の崔さんは「これはお金の問題ではなく、在日朝鮮人に対する人権侵害です。県知事は県民の理解が得られないと話されますが、私たちが文科省前で就学支援金の支給を求めるとき、一緒に声をあげてくれる日本市民もいます。かれらも県民です。県知事はあたかもすべての県民が朝鮮学校を理解できないから補助金を出せないと言い、新聞記者の多くも朝鮮学校を否定する知事の考えにのっかり、朝鮮学校側に原因があるかのような質問を繰り返し、記事を書いています。県がうたう多文化共生について疑問に思っています」と訴えた。
明日は神奈川朝鮮高級学校の卒業式。崔さんは大学に進学し、法律を学ぶことにした。「朝鮮学校をはじめ世界で蹂躙されているマイノリティの教育権について学び、その第一人者になりたい」と話す。
生徒たちの訴えを傍で聞いていた同校の呉亨世教員(34)は、「知事が補助金を出さないと決めたので、県庁の職員もその決定を変えられない」という立場を感じ取ったという。
高3担任の康泰成さんは、寒さのなか、プラカードを掲げて補助金支給を訴える子どもたちを見ながらこう話していた。
「元来、子どもたちを表に立たせたらダメだと思います。大人としてのふがいなさを感じています。無償化差別が始まる前にもっとできることがあったのではないか…」。教員としての苦悩がにじんだ言葉だった。
黒岩県知事は2011年、朝鮮高校の歴史教科書「現代朝鮮歴史」から拉致問題の記述がなくなったことを問題視し、以来学園に対し、「適正な記述」を求めてきた。
県は14年3月、学校への補助金を保護者の経済的負担を減らす補助金制度に切り替えたものの、朝鮮学園に対しては教科書内容の「改訂」を補助金支給の「前提」とした。
教育内容に介入するという、監督庁としての「権限外」の圧力を加えながら、昨年11月には「16年中の改訂が困難になった」と、16年度分の約5300万円の補助金交付を留保。2月8日には17年度の予算案への計上を見送ると発表した。
これを受け、神奈川朝鮮学園と保護者たちは2月10日、県庁で記者会見を開き、補助金の支給再開を求めた。
金鐘元理事長は談話を読み上げ、「教科書の改訂を『前提』として朝鮮学校の保護者に対してのみ、学費補助を『留保・停止』するとした黒岩知事の発表は、県の学費補助金制度の趣旨や日本国憲法、私学教育法、国連の子どもの権利条約、人種差別撤廃条約に著しく反するものであり、何の罪もない朝鮮学校の児童・生徒の学ぶ権利を踏みにじる民族差別そのもの。露骨な差別と排除は、将来に洗い流すことのできない心の傷を残し、怒りと悲しみを植え付けるだけだ」と訴えた。
この1年間、生徒たちは月1回の文科省要請も欠かさず行ってきた。
「後輩たちに悔しい思いをさせたくない―」。この思いを胸に行動でもって差別撤廃の意思を示した卒業生たち。
かれらが進む先に大きな道が開かれることを願っています。卒業、チュッカハムニダ!(瑛)