祖父が南相馬でパチンコ屋を
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福島県南相馬市に引っ越して三ヶ月になります。
なにしろ十四年間暮らした鎌倉の家を引き払って、その全ての家財と段ボール百五十箱分の蔵書を南相馬の借家に持ち込んだわけですから、三ヶ月が経っても、まだ片付いたとは言えない状態なのは、仕方ないと言えば仕方ないな、と半ば諦めています。
この間、家族全員で二度も風邪をひきました。わたしだけ咳が治らないどころかますますひどくなるので病院に駆け込んだところ、引っ越しで大量のハウスダストを吸い込んだことが引き金となって、持病の喘息が悪化したという診断でした。投薬治療と鍼治療でようやく完治したと胸を撫で下ろした矢先――、五月二十日に、息子が自転車で転倒して肩の骨を折るという大怪我をしてしまいました。
リュウ・ミリ●作家
1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。