【高校無償化】弾圧にカウンターパンチを~2.20 省令改悪から3年
広告
3年前の2013年2月20日は、文部科学省が朝鮮高校を無償化制度から永遠に除外するために省令を改悪した日だ。この日に合わせ、日本各地では集会や街頭宣伝など「一斉行動」が行われ、在日コリアンの子どもの学ぶ権利を奪い続ける日本政府へ怒りの声を突きつけた。
“一人でも多く連帯の輪を”
大阪で全国集会
「こどもたちの笑顔と希望のために 朝鮮学校高校無償化全国一斉行動全国集会」が2月13日、大阪市北区の大淀コミュニティーセンターで行われ、日本各地の無償化裁判支援団体、朝鮮高校生徒、保護者をはじめとする同胞、日本市民ら420人が参加した。
集会では「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の韓哲秀共同代表があいさつをした。朝鮮学校の保護者歴が17年になる韓さんは、「高校無償化制度から除外されて6年。大阪府と市の補助金も打ち切られ、本当にしんどい。しかし、朝鮮学校は孤立無援の戦いを強いられているわけではない。200を超える市民団体で『無償化連絡会大阪』が成立している。これは朝鮮学校を差別から守ることが、日本の人権意識を高めることだと信じているから」と思いの丈を伝えた。「この戦いを生きぬくために一番必要なのは連帯。私たちの『連帯』を徹底して嫌う植民地主義者たちの策略に乗ってはいけない。かれらの言い分を冷静に分析して、内部分裂しないこと、一人でも多く連帯の輪を広げることが何より大事だ」と語ると、共感の拍手が送られた。
丹羽雅雄・大阪無償化・補助金裁判弁護団長は、「高校無償化差別は、歴史修正主義、改憲、教育の国家主義的改編を推し進める安倍政権による民族教育への露骨な政治介入であり、補助金裁判は、これに呼応する橋下徹・維新勢力の地方自治行政による政治介入だ」と人権意識なき為政者たちを非難した。また、大阪無償化裁判(2013年1月24日提訴)と補助金裁判(2012年9月20日提訴)について、「早ければ年内に判決が出る可能性がある」との見通しを語り、社会的な関心で裁判を盛り上げていこうと呼びかけた。続いて、大阪、福岡、広島、愛知、東京の代表から無償化、補助金裁判の進行状況、支援活動などが報告された。
集会では、大阪補助金裁判第17回口頭弁論(1月21日)で上映された大阪朝鮮学園を紹介する映像が流された後、大阪、京都、神戸朝高に通う3人の高校生たちが発言し、「朝鮮人としての『心の軸』を得ることのできる特別な場所が朝鮮学校だ」(大阪)などと母校への思いが伝えられた。また、「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミフィ共同代表の連帯あいさつ、昨年末に作詞作曲された朝鮮学校応援ソング「モア(more)」の合唱後、「連絡会」事務局の大村和子さんが集会決議文を読み上げ、大きな拍手によって採択された。 決議文は、馳浩文部科学大臣にすみやかな無償化制度の適用を求めた。(朝鮮新報・高英俊)
文科省へ、怒りの要請
2月19日には東京・虎ノ門の文科省前に朝鮮学校生徒と保護者、日本人支援者など、日本各地の代表ら約50人が詰めかけ、朝鮮学校を6年間も無償化から排除し続ける文科省へ抗議と要請を行った。
くしくもこの2日前、与党・自民党が、朝鮮学校への地方自治体の補助金廃止を検討すべきとの考えを示したことが明らかになり、文科省職員へは、「子どもたちがまた政治の道具になっている」「本当に許しがたい」など厳しい抗議がなされた。
越政樹・初等中等教育局財務課高校修学支援室専門官と小林克嘉大臣官房国際課国際協力企画室室長補佐が会場に到着すると、各地の代表や同胞たちが発言した。
「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク・埼玉」の共同代表として請願書を提出した斎藤紀代美さんは、「朝鮮学校の生徒たちの尊厳やアイデンティティを深く傷つけ、非教育的と言わざるを得ない。国による差別は当事者を苦しめるだけでなく、民族に対する差別やヘイトクライムを社会全体に広げることにつながる」としながら、朝鮮学校の無償化制度適用を求めた。
他にも大阪、広島、愛知、千葉の支援者、東京朝鮮中高級学校オモニ会の代表、朝鮮学校教員、朝鮮大学生らが発言。また、現役の東京朝高2年生も自身の思いを吐露した。
「僕たちが何百回も何千回も叫んできたこのことについて、一度でも真剣に考えたことはありますか? これからも聞くだけ聞いて知らん振りをするつもりですか? 私たちが求めているのは当然の権利と、今まで起きたことへの謝罪のみです。これをしない限り、私たちはいつまでも叫び続けます」。時に声を詰まらせながら必死に訴える男子生徒を励ます声も上がった。
発言後、要請団から「朝高生の生の声を聞いてあなたはどう思うか」という質問が。「組織の人間ですので、組織の中で決まったお答えしかできません」という不誠実な態度に怒りの声が飛び交い、さらに職員たちが朝鮮学校や在日朝鮮人の歴史を知らないということが判明すると、「基本認識がないから簡単に差別するのだ」などと非難が集中。補助金廃止の件についても要請団から多くの発言があったが、「この場で(あなた方が)いくら言っても変わりませんので」という驚きの発言には、怒りを通りこして失笑する支援者の姿も見られた。
朝大生たちと金曜行動
要請後、文科省前では「金曜行動」が行われた。文科省に要請書を提出した代表たちが、朝鮮大学生の「金曜行動」と連帯。文科省前では約1200人の参加者が声を上げた。
朝高生を守るように囲み、朝大生、保護者、支援者たちが声を上げる。この日、東京中高オモニ会からは100人以上が参加。群馬県の金春琴さん(49)は、「やっぱり、常に声を出していかないとだめだと感じた。例えば全国の青商会も朝高生たちと一緒にここに立ってくれたら、もっと力強いアピールになると思う」と期待を語っていた。
東京でも集会
「朝鮮学校と私」テーマに
「朝鮮学校で学ぶ権利を! 2・20東京集会」(主催:朝鮮学校で学ぶ権利を!東京行動実行委員会)が2月20日、東京・田町交通ビルで行われ、関東地方の在日コリアンや日本市民ら380人が集まった。
冒頭、東京朝高合唱部の生徒たちが朝鮮語と日本語で「故郷の春」「涙そうそう」を披露。集会前には、国連で日本政府への勧告を勝ちとったオモニたちや、文科省前で無償化差別を訴える朝大生の姿を収めた映像が流され、6年間にわたる無償化実現に向けた闘いが振り返られた。
「朝鮮学校と私」をテーマに進められた集会では、朝鮮学校支援に携わる弁護士たちが登壇した。トップバッターは京都朝鮮学校襲撃事件裁判の弁護に立った冨増四季弁護士。「皆さんを元気にする話をしたい」と切り出した冨増弁護士は、裁判対応を通して見えた「在日の民族教育の真価」について語った。
留学した米国で多文化共生の考え方が受容されている様子を目の当たりにした後、京都の朝鮮学校で学芸会を見た時「度肝を抜かれた」との感想を語った冨増弁護士。家族やコミュニティーが子どもの成長を喜ぶ姿に感動する一方、朝鮮学校の存在がこの社会で知られていないことに衝撃を受けたという。「朝鮮学校は世界の宝であり世界遺産。朝鮮学校の価値をはかるものさしが日本社会にないので、そのすばらしさが伝わらない。私自身も、生まれ育った三重の朝鮮学校を不気味に思っていたことがある。偏見で目が曇っていたからだ」と振り返った。また、朝鮮学校という集団を保護することは、世界が抱える苦悩を克服する道につながると問題提起し、在日コリアンの民族教育権について認めた大阪高裁判決を高校無償化裁判に生かしてほしいと指摘した。
続いて、東京無償化裁判弁護団の伊藤朝日太郎弁護士、康仙華弁護士、「チマ・チョゴリ友の会」の松野哲二さんが「朝鮮学校とわたし」をテーマに語った。
いつも支援の先頭に立つ松野さんは、「チマ友の会」で朝鮮料理講座やハングル講座、在日1世の聞き書きを続けてきたことに触れながら、運動を続けるコツを伝授。「少数を嘆かず堂々と」「子どもたちの人権を最優先に」など、笑いを誘いながら共闘を呼びかけていた。