【特別企画】 メディアは社会を変える?
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日本社会の右傾化や軍国主義化が進む中、日本のマスメディアは政治権力に屈し、市民たちの声を封じ込めてしまうことでそのような社会の変容に加担してきた。一方で、独自の切り口と主張で大きな流れに対抗する志あるメディアも存在する。受け手一人ひとりの思考力を鍛え、世の中の風潮を再び変えようと尽力するメディアを、ネット媒体を中心に紹介する。
発見! お助けメディア
知るべき情報はどこ? 正しい情報の見分け方は? 独自の目線で社会に切り込む情報を発信し、メディアリテラシー獲得の手助けをしてくれるネットメディアを一挙紹介。
①レイバーネット日本 http://www.labornetjp.org/
現場で闘っている人たちのレポート
労働運動を中心とした市民運動の情報ネットワークのウェブ・サイト。イギリスでの港湾労働者の闘いを発信することから始まり生まれたもので、アメリカや韓国など現在、世界の11ヵ国でレイバーネットは運営されている。日本で設立されたのが2001年2月。各国は連携をとりながらも独自で運営されている…
②マガジン9 http://www.magazine9.jp/
すべての人たちに、社会変革のパワーを
ポップなレイアウトが目を引く「マガジン9」のサイト。中身は濃い。映画監督・三上智恵さんは、米軍のヘリパッド建設に反対する沖縄・高江の闘いを伝え、シールズの奥田愛基さんはデモの意義を語る。国会議員や自治体トップ、時の人を登用した対談やインタビューも新鮮だ…
③SYNODOS ―シノドス― http://synodos.jp/
専門性の高い記事で、思考力を与える
SYNODOSは、「アカデミック・ジャーナリズム」を旗印に専門性の高い記事を配信するニュースサイト。研究者や医師、弁護士などの専門家、NGOやNPOスタッフ、当事者など、「そのテーマに一番詳しい」人たちが記事を執筆するのが特徴だ。ジャンルも政治・経済・社会・国際・科学・福祉・教育・情報・文化と幅広い…
④NPJ (NEWS FOR THE PEOPLE IN JAPAN) http://www.news-pj.net/
権力や資本を持たない”弱者”の立場で
NPJは、憲法、人権、原発などをめぐるニュースや解説、動画が充実しているニュースサイトだ。連載も10本以上あり、「練馬自衛隊基地ウォッチング」「憲法9条と日本の安全を考える」「アフリカ熱帯林・存亡との闘い」などが人気だ。同じ思いを持ったフリーランス、大学教員、学生、主婦たちで情報発信している…
※他にも!
INDEPENDENT WEB JOURNAL(IWJ) http://iwj.co.jp/
ジャーナリスト・岩上安身氏によって2010年に設立されたインターネット報道メディア。社会で起こっている様々な出来事を編集・加工されない一次情報のまま伝えるメディアとして、現場からの生中継動画を多く配信している。扱うテーマは戦争・歴史認識に関するものや国際情勢、経済、政治など。市民の定額会費と寄付・カンパによって支えられている。
LITERA(リテラ) http://lite-ra.com/
2014年、「本と雑誌の知を再発見」をコンセプトに開設したが、悪化する政治状況や言論の閉塞に少しでも歯止めをかけようと、安倍政権や保守言論、ネットにはびこる差別を徹底批判する記事が中心に。マスコミ報道の裏側暴露にも力を入れており、憲法を守りたいと考える人たちや反権力、反ヘイト、反差別を掲げる人たちにとって欠かせない情報源となっている。
日韓ネットのブログ http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/
日韓ネットは、1996年に東京とソウルで開催された「朝鮮半島の平和と統一のための日韓共同シンポジウム」を契機として、同年3月15日に発足。現在、朝鮮半島の平和と統一の支持や韓国労働者との連帯などの活動を繰り広げている。ブログでは、韓国での民衆の闘いや日韓連帯運動の様子が日々報告されている。日本の報道では接することのできない情報が満載。
神奈川新聞社が運営するニュース&コミュニティサイト。「カナロコ」は、「神奈川」の「カナ」と、ハワイ語で「地元の人」を意味する「ロコ」を組み合わせた造語(同サイトより)だ。人権、差別、平和の問題に果敢に切り込む同紙の看板企画『時代の正体』も一部無料で閲覧可能。「偏っている」という批判に「ええ、偏っていますが、何か」と宣言して大反響を呼んだ。
ポリタス http://politas.jp/
ジャーナリストの津田大介氏が編集長を務める政治情報サイト。「あなたの『政治の見方』にプラスとなる情報を提供する、オンラインの政治メディア」をうたい、2013年7月に開設。国会、雑誌、新聞、テレビ、インターネットなど様々なメディアにおける各政治家の発言をデータベース化したことが特徴だ。発言には情報源が明記され、発言の経緯も確認することができる。
安田浩一ウェブマガジン ノンフィクションの筆圧 http://www.targma.jp/yasuda/
ヘイトスピーチや沖縄米軍基地問題の取材を続けるノンフィクションライター・安田浩一氏のウェブマガジン。ノンフィクションを載せる雑誌が減る中、取材現場の空気、肌触りと匂いが刻み込まれた力作が並ぶ。都知事選に立候補した「在特会」元会長のインタビューや、ヘイト本の発行を続ける出版業界の内実など、ここにしかない情報が満載だ。月額648円(税込)、無料記事もある。
完全に封殺された言論(前田康博●国際政治研究者)
はじめに
国会で戦争法案(安保法制)が強行採決され、一〇か月が経った。安倍暴走内閣は“壊憲”への道を一直線に進んでいる。
無残な敗戦から七一年目の夏はことのほか暑い。
この間、「戦争を放棄した国」の土台となった平和憲法はすでに「外堀」と「内堀」を埋められ、風前の灯となってしまった。
「内堀」は悪名高い小選挙区制によって少数野党が分立させられたことである。分立した野党は勝馬に乗るしかない有権者たちの絶望的な現実認識の受け皿となる能力を喪失してしまった。
弱い民衆は“時代閉塞”の想いを強めながらも、なけなしの未来を強い政治権力に託してしまう。
「外堀」は言うまでもなく、民衆の声を代弁するはずの「言論」が完全に封殺され、政治権力の前にひれ伏してしまったことだ。
報道機関は電波・活字メディアを問わず、保守右翼与党の巧妙な仕掛け針に掛かり四分五裂した。言論史上、政治権力に正面切って対抗した経験がない日本マスメディアは“優柔不断”さが災いし、「公正、客観、中立」など政治権力の煙幕に手もなく騙されてきた。そして自己規制、自粛という自縄自縛に陥ってしまった。
折しも英国が国民投票でEU離脱を決めたが、ついに安倍政権は参院選で改憲を可能とする「三分の二」を得たと、「平和憲法からの離脱」を高らかに宣言した。
エリート階層出身の記者、編集者たちは記者クラブから垂れ流される官製カンペ(報道資料)を下敷きに、民衆の想いを無視して政治権力擦り寄りの報道を日常の生業としている。「ジャーナリズムは必ず民衆の側に立つはず」というのは民衆の抜きがたい思い込みであり、いまさら問題視するのは、民衆側の錯誤といえる。
今年は明治一五八年にあたる。明治は四五年間で終わったのではく、今なお明治薩長藩閥政治の連続であり、天皇制と軍国主義を国是とするお国柄であることをまず確認する必要がある。
そうでなければ「戦後レジームからの脱却」という妄言も、集団自衛権への妄想も理解不能となる…