夏は、なんといっても平壌冷麺です− 柳美里
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夏は、なんといっても平壌冷麺ですね。
二年前に初めて朝鮮民主主義人民共和国を訪問し、玉流館の平壌冷麺を食べるまでは、冷やし中華が大好物で、スーパーでシマダヤの「『もみ打ち』生冷やし中華」を買っては、ハム、チャーシュー、卵焼き、キュウリ、焼海苔を細切りにして毎日のように昼ごはんにしていたのですが、二年前から平壌冷麺に取り憑かれ、最近では夢のなかにまで出現して、歯ごたえのある麺を噛み、コクがあるのにサッパリしているあの魅惑のスープを一滴残らず飲み干す有様なのです。
リュウ・ミリ●作家
1968年生まれ。神奈川県出身。鎌倉市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を訪問。近著に「ファミリー・シークレット」がある。