離婚:国籍別で異なる手続きに注意
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在日同胞が直面する生活上のさまざまな問題の解決法について、人生のステージごとにわかりやすく解説します。
文時弘 ●在日本朝鮮人人権協会
離婚
Q1尹さん一家の長女・ヨンエさん夫婦が離婚することに。韓国籍同士の夫婦なのですが、離婚の手続きは複雑ですか?
A:夫婦のどちらか一方が日本国籍であれば日本法による離婚の手続きで行うことが可能ですが、夫婦双方の本国法(※)がともに朝鮮民主主義人民共和国法(以下、共和国法)の場合は共和国法で、韓国法の場合は韓国法の規定による手続きが必要になります。また、夫婦の本国法が共和国法と韓国法など双方で異なる場合は、居住地である日本の法を準拠法とします。日本法と共和国法・韓国法では離婚の規定が異なり、少々複雑なので要注意です。
日本法における離婚の方法には、夫婦の話し合いと合意による①協議上の離婚と、家庭裁判所に夫婦の一方が離婚調停を提起する②調停離婚、さらに調停でまとまらない場合、離婚訴訟により家庭裁判所が民法上規定された「離婚原因」の有無を判断する③裁判離婚があります。
日本法では協議離婚であれば夫婦の合意のもとに離婚届を提出すれば離婚が成立しますが、韓国法における協議離婚は、手続きに手間と時間がかかります。在日同胞の場合、必ず夫婦ともに(代理人不可)駐日韓国総領事館に赴き、離婚の案内書の交付を受け、領事面談を経て必要書類を作成します。案内書の交付時から「熟慮期間」(子がいる場合は3ヵ月、いない場合は1ヵ月)経過後、領事館で「離婚意思の確認」が行われます。その後、韓国の家庭法院から領事館を経由して「確認証明書」が送達されるので、送達後3ヵ月以内に確認証明書を添えて領事館に離婚届を提出することで離婚が成立します。また、裁判離婚における「離婚原因」も、韓国法には日本法と異なる部分があります。
一方、共和国法では①を認めておらず、裁判上の離婚だけを認めています。日本の行政窓口では、その者の本国法が共和国法であることを考慮せず、韓国法による手続きをミスリードすることもありますが、協議離婚の場合、その離婚の効力をのちのち否定されトラブルになることも考えられます。朝鮮籍同士など本国法がともに共和国法の夫婦の離婚の場合、裁判上の離婚をすることが法律上確実です。
※その者の国籍国の法律。在日同胞の国籍は必ずしも特別永住者証明書(または在留カード)の表示どおりではない。たとえば特別永住者証明書は「韓国」表示の共和国旅券所持者も少なからず存在し、その者の本国法は共和国法であるということができる。
Q2離婚後はひとり親で、子を養うのは経済的に不安です
A:子どものいる夫婦が離婚した場合、その子が、18歳に達する日(誕生日前日)以後の最初の3月31日まで(※1)にある子であれば、その子を養育している養育者の申請で「児童扶養手当」が支給されます。申請先は住所を管轄する市町村役場の窓口です。手当の額は子および扶養者の数、養育者の所得に応じて決定されます(※2)。手当の支払いは、児童扶養手当法改正により、2019年11月から2ヵ月分ずつ年6回(奇数月に前月までの2ヵ月分)になります(現在は4ヵ月分ずつ年3回)
※1 一定以上の障害の状態にある場合は20歳未満
※2 児童1人で養育者の所得が制限額未満(全部支給)であれば月額4万2500円(2018年4月以降の額)
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