トトロ
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宮崎駿監督の「となりのトトロ」(1988年公開)はたぶん4~5回ほど観ているが、最初にいつ観たのか、どういうシチュエーションで観たのか思い出せない。「火垂るの墓」と併映されたようだから、公開当時に映画館で観たわけではないようだ。なぜなら、「火垂るの墓」は一度も観たことがないからだ。
公開前や公開初期に大きく話題になった映画ではなかったと思う。作品のクオリティの高さやトトロというキャラクターの存在により人気が出た。ジブリの代表作と言ってもいいだろう。どんなストーリーか言えと言われると困ってしまうほど、これといったストーリーがないのだが、確かに良い映画だ。
物語の時代背景は「昭和30年代初期」だとされている。映画にはテレビや冷蔵庫が出てこない。田舎にまだそういうものが普及していなかった頃なのであろう。電気炊飯器、クーラー、電子レンジ、ファックス、パソコン、テレビゲーム、携帯電話などなど、映画の時代から50年の間にいろんなものが普及し便利になったが、生活は(人生は)豊かになっていないのではないか、こういった多くの人が持つ思いに共鳴したことが、「となりのトトロ」の人気の理由のひとつなのだろう。
ネットで見ると、トトロは「森の主でありこの国に太古より住んでいる生き物」だという。トトロも、同じ宮崎駿監督の「もののけ姫」に出てくるシシ神も、同じような存在だということになる。宮崎駿監督は一貫して、自然に手をつけなければ生きていけなくなった人間の業を描いているのだと思っている。そして、自然に対する畏怖の念を忘れてはならないということを語りたいのだと思う。
手塚治虫の漫画「火の鳥」には多くの編があるが、最後となった「太陽編」がけっこう気に入っている。そこにも森やその土地土地に宿る神々が登場する。仏教を日本在来の神々をけちらす侵略者として描いているのが感心した。宗教はあくまでも人間が作ったものにすぎない。では、神はどうなのだろうか?
前回、「次回はトトロについて書きたい」と書いたことを非常に後悔している。マニアが多い宮崎駿監督の作品について書くという無謀なことをしたため、非常に歯切れの悪い文章になってしまった。だから、「火の鳥」については、次回ではなく気が向いたときに書くことにする。(k)