将軍峰(祖国訪問記22)
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なぜだかわからないが、白頭山の上で日の出を拝もうということになる。朝4時前に起きて宿舎を出発。5時に白頭山に到着した。しかし、白頭山から太陽が昇る姿を見るためには、白頭山はもちろん、そこから東海まですべてが晴れていなければならない。1年のうちに奇麗な日の出を拝めるのは10日もないという。いくら悪運が強いとはいえ、やはりこの日も霧が立ちこめ太陽が昇るところを見ることはできなかった。
しかし、違った意味でいい経験ができた。7月中旬だというのに、めちゃくちゃ寒いのだ。警備にあたっているユンさんが、気温は5度だと教えてくれる。下着の上に長袖を2枚、さらにその上から統一通り市場で買った上下のスポーツウェアを重ねて着る。案内のリさんもしきりに寒がる。下着と人民服の2枚しか着ていないので当然だ。
しばらくすると霧が薄くなり天池が姿を現した。ここぞと写真を撮りまくる。そしてまた霧のなかに。警備のユンさんが「将軍峰に登りませんか」と言うので登ることにした。車を止めたところから1000メートルの距離だ。歩きながら話をする。ユンさんはまだ21歳だが18歳から3年間も白頭山の上で勤務をしていると言う。真冬にはマイナス30度以下にもなるとのこと。白頭山は中国との国境にもあたるため、ユンさんのように常時、警備する人が何人もいるのだ。
白頭山の最高峰、将軍峰に到着。標高2750メートルの高さだ。しかし、霧のため視界は10メートルほどしかない。厳密に言うと将軍峰の手前まで来たが本当の頂上までは5メートルほど距離がある。しかし、頂上まで行くには幅50センチほどのくびれたところを通らなければならない。しかも岩がでこぼこで足の踏み場はきわめて限られている。両側は断崖絶壁で足を踏み外すと天池まで落ちてしまう。「頂上まで行きますか?」と平気な顔で訊くユンさん。そんな恐ろしいことをよく言うなと、心のなかで苦笑してしまった。
最初に見たときは厳しい顔をしていて、30歳くらいに見えたユンさんだが、話をするうちにいつのまにか21歳の幼さい表情に変わっていた。下りるときに「白頭山の特有の軽石です。水に浮きますよ」と石を拾って筆者に手渡してくれた。(k)