朝鮮八道料理紀行
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7月号の特集は朝鮮半島の各地方に伝わる郷土料理です。日本に住む在日同胞はその多くが現在の韓国、朝鮮半島の南部出身ですが、今回は、慶尚道、全羅道、済州道を中心に朝鮮半島に伝わる郷土料理を北から南まで一挙に紹介します。
私は自分の故郷である慶尚道を担当していますが、南部の他の地方の人たちに言わせると、慶尚道は朝鮮西海と南海に囲まれ、魚を고기というほど、海産物を使った料理も多いそうです。味付けは辛め。今回は、魚の煮付け、トンレパジョン、貝のスープなどを紹介する予定です。
幼い頃から1世のハルモニが作る料理がとても好きだったのですが、他の地方の料理を食する機会はあまりなく、2002年に取材で全州に出かけた際にいただいたコンナムルクッパ(豆もやしのクッパ)の素朴な味に感動し、いつかまた現地で食べたいな、と夢見ています。また、学生時代に平壌で食べたムルキムチや白頭山近くのホテルで食べたジャガイモ料理の味も懐かしい。
朝鮮料理の特集をするたびに思うのは、私たちにとって食文化とは、異国で世代を重ねながらも、根強く残っていく文化のひとつなんだろう、ということ。今回も2、3世の料理人たちが忙しい合間を縫って朝鮮半島の料理を作ってくれたのですが、3世の中でも立派な腕を持った料理人がもっともっと出てきて欲しいと思います。
料理の撮影と取材が終わった後、作っていただいた料理に舌鼓を打ちながら、料理人のオモニたちと他愛もない話ができるのもこの取材の楽しみのひとつです。その席で必ず話題に上るのは家族や子育ての話です。あるオモニは「団欒って言葉があるけど、味噌汁ひとつでもいい。家族のために作った食事を囲みながら色んな話ができるのよね」と3人の子育てを振り返っておられました。お惣菜も手軽に買え、外食もいくらでもできる時代ですが、家族の団欒や人が集まる、その輪が広がっていく우리 음식の魅力を再確認しています。(瑛)