軍艦島
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今年から月刊イオで「1世の足跡を辿る」という企画をスタートさせた。同胞1世の歴史を振り返る企画で、1世にゆかりのある場所を紹介する「旅編」と、1世の証言を聞く「声編」を交替で掲載している。
「旅編」と「声編」は最初、昨年9月に2010年度の企画会議をしたとき、それぞれ違う企画として出されたものだった。話し合っているうちに合体したのだが、企画とはそんなものだ。ちなみに、「旅編」は私が、「声編」は(里)さんが企画を出した。
私が「旅編」の企画を出したのには理由があった。どうしても長崎の軍艦島に行きたかったのだ。 昨年5月に軍艦島ツアーが開始されたというニュースを聞いたとき、30年ほど前に見た、在日同胞の強制連行を追ったドキュメンタリー映画を思い出した。映画には軍艦島での強制労働のことも出てきて、軍艦島の異様な姿が映し出されていた。その映画を観て以来、私の心の中に軍艦島が存在し続けたのである。
そして、ツアーの開始。
どうしても軍艦島に行きたい。しかし、なかなか休みが取れない。お金もかかる。そもそも一人旅などできない…。
出た結論は、一つだった。
取材を作って会社のお金で行くしかない。
かくして、「1世の足跡を辿る―旅編―」がスタートしたのである。
その軍艦島に、先日行って来ました。4月まで船が出ておらず、なんだかんだと日程を調節しているうちに、6月になってしまいました。
長崎県に行くのは35年ぶりだと思っていたのですが、15年ほど前に、これもイオの取材で対馬に行っていました。話は脱線しますが、対馬もぜひ行きたい場所だったんです。対馬から朝鮮半島の南を眺めたかった。当時はまだ韓国に行くことができず(6.15の前でした)、ひと目でいいから自分の目で南の地を見たかったのです。しかし、天候が悪くて見ることはできませんでした。
そのときのことを可愛そうだと思ってくれたのか、今回は非常に天候に恵まれました。天候に恵まれたというのは非常に重要なことで、天気が悪いと上陸できないし、海が荒れると観光船自体が出港取りやめとなります。年間に上陸できるのは120日ほどだと言っていました。
現地で聞いた話だと、軍艦島ツアーは現在、4社が実施していているそうです。私が参加したのは、やまさ海運株式会社が行っているその名も「軍艦島クルーズ」というもので、所要時間2時間50分、代金4300円でした(前日までに予約が必要です)。毎日9時発と13時10分発の2便があります。私は朝9時のに参加しました。上陸せずに軍艦島の周囲を船で巡るコースもあります。
平日の朝にもかかわらず、ツアー客は50人ほどいました。思ったよりも人気がありました。休みの日には150人ほどになるそうです。見た限り、全員が観光客で、仕事で来ているのは私だけのようでした。島に着くまで約50分。途中に三菱の馬鹿でかい造船所が見えます。船の中では観光案内のアナウンスをしてくれるのですが、「戦時中は戦艦を作っていた」と、のんきに説明していました。
軍艦島の手前に高島という島があります。軍艦島よりも大きく、今も人が住んでいます。ここも炭鉱の島で、多くの朝鮮人が強制労働をさせられました。軍艦島よりも規模が大きかったので、働いていた朝鮮人の数も多く、3500人もいたそうです。高島でも強制労働があったということは知っていたので、何枚も写真を撮りました。他の観光客は高島のことは無視です。
高島を過ぎると、軍艦島はもうすぐで、船上からでも大きく見えてきます。海の上に忽然と人工の街が出現した感じで、漫画や映画でよく出てくる海上の監獄のようでした。島の周りはコンクリートの壁で囲まれています。今も大きな島ではありませんが(周囲1200メートル)、もともとはもっと小さな島で、埋め立てコンクリートで塗り固めて今の大きさになっています。
私は仕事なので、当然、島が見えた時点から望遠で撮影していますが、軍艦島が近づくと観光客も記念写真を撮り始めました。関西から来たと思われる若い女性の3人組が、私に「写真撮ってください」と声をかけてきました。軍艦島をバックにピースサインをしている写真を喜んで撮ってあげました。
そうこうしているうちに到着。上陸時間は約1時間。島にはトイレがないので事前に済ませるように、スリッパなどでは上陸できない、と何度もアナウンスされます。
上陸すると、ある程度自由に行動できるかと思っていたのですが、見学ポイントが決められていて、コースが整備され、そこから出ることはできませんでした。島の南側に3つの見学ポイントが作られ、それぞれガイドが説明してくれます。予想していた通り、朝鮮人や中国人がここで過酷な労働を強いられ、何人もの人が死んでいったということについては、一言も触れられませんでした。
見学時間はあっという間に過ぎ、島を後にします。帰るとき、観光船は島の周りを1週してくれます。到着するまでは島の東側だけしか見えなかったのですが、西側に回るとコンクリートむき出しの建物が林立し、より監獄のように見えます。島全体の形も、軍艦にそっくりです。
長崎港に戻り船を降りるとき、「軍艦島上陸証明書」をもらいました。その裏に「今ここに新たな歴史の扉を開く」と書かれてました。まず、過去の歴史を清算してもらいたいものです。いま軍艦島を世界遺産に登録しようという動きがあります。過去に軍艦島に住んでいた人たちが中心になって活動しているようです。事前にその人たちが書いた「軍艦島の遺産」という本を読んだのですが、石炭生産のことや日本人の暮らしのことばかりで、朝鮮人のことは、たった5行しか書かれてありませんでした。それも「強制連行」「強制労働」という言葉は一言もありません。世界遺産にするのは良いですが、日本の過去の国家犯罪を後世に伝えるための世界遺産にすべきです。
今回の「軍艦島クルーズ」、廃墟となった建物の中に入れるのかとちょっと期待していたので残念でしたが、でも、がっかりはしませんでした。行って良かったと思います。ぜひ一度、軍艦島に行くことをお薦めします。(k)
私も37年前に行きました。
私も1973年春に、「朝鮮人強制連行調査団」の取材記者として行きました。当時は、すでに「定期船」はなく、船をチャーターしたと思います。
林立するビル群、その不気味な姿はいまでも記憶にあります。九州に散在していた「ぼたやま」はどうなっているのでしょう。「炭住」は?
「企画」楽しみに読んでます。
新報社にも多くの写真が
追・新報社にも軍艦島の建物内部の写真が多数所蔵されているはずです。
こんなものを見つけました
軍艦島の教材用スケールモデルです
Scale:1/200
¥23,100(本体価格 ¥22,000)
2010年9月上旬 発売予定
http://www.gizmodo.jp/2010/06/11400_gunkanjima.html
http://www.aoshima-bk.co.jp/scripts/shouhin/shohin-shosai.aspx?&code_a=08815&si_id=570&mk=2
amazonでも購入出来ます。
軍艦島の模型?!
gizmodo読者さん、貴重な情報ありがとうございます。こんな模型があるんですね。驚きました。