高校無償化―検討会議の報告―
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高校授業料の無償化が、他の外国人学校には適用したのに朝鮮学校を排除してスタートしたのが4月1日。その後、文科省は、専門家による検討会議を設置しそこで討議して朝鮮学校に適用するのかどうかを判断するとしてきた。
その検討会議の報告が8月31日に発表された。
しかし、結論から言うと、検討会議の報告は、朝鮮学校に適用するかどうかについてはいっさい判断を示しておらず、ただ「適用すべき基準、審査体制」を示したものであった。朝鮮学校を無償化の対象とするかどうかは、この基準に基づき、これから民主党の内閣、文部科学の両部門会議が検討を行うということである。
結論はまた先送りされたわけであり、内閣部門会議は拉致問題を担当している。そもそもこの問題は、当初、無償化には朝鮮学校も含まれており予算も組まれていたものを、拉致担当相が朝鮮学校を対象から外すよう文科省に要請したことから始まったもので、きわめて政治的な問題である。
この間、何度も在日同胞や日本人が文科省に要請にいったが、そのたびに文科省の人たちは、「政治的な問題や外交的なことで判断しない。純粋に教育内容で判断する」と繰り返してきた。
今回出された検討会議の報告でも、「Ⅲ 審査体制・手続等について」のところで「外国人学校の指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものであるということが法案審議の過程で明らかにされた政府の統一見解である。」としている。
今回、検討会議の発表した基準(高等専修学校に求められているレベルに加え高度な普通教育に類する教育など)に照らすと、朝鮮学校が基準をクリアするのは明らか(もともとそんなことはわかっている)。にもかかわらず、さらに内閣、文部科学の両部門会議で検討するというのは、結局、「朝鮮学校に適用するかどうかは政治的に判断する」と言っているのと同じことだ。
一日も早い適用を願い、これまで署名活動や街頭宣伝などを繰り返してきた生徒たちや保護者、学校関係者や日本人の気持ちを、再び踏みにじるものだと言うしかない。今は党首選のことで頭が一杯で、朝鮮学校のことなど、眼中にないのであろう。
全国朝鮮高級学校校長会の慎吉雄会長は9月1日、報告が発表されたことを受け談話を発表し、「朝鮮高級学校生徒への無償化適用の判断が示されるまでには至りませんでした。このことに対し、朝鮮高級学校の生徒と保護者、教職員たちはまことに残念に思っています」と指摘している(朝鮮新報の日本語版HPに全文掲載)。
また、検討会議の報告では、基準が維持されているか3年ごとにフォローアップし、基準が満たされない場合は、指定の取消等の必要な措置をとる、としている。他の外国人学校は、何も検討されることなく摘要され、今後も検討されることがないのに、朝鮮学校だけが今後も監視されつづけるということだ。
朝鮮学校に適用するのはあたり前のこと。日本政府は、まったく一からやりなおして朝鮮学校を他の外国人学校と同様にあつかうと同時に、朝鮮学校に謝罪すべきである。(k)