ラガーマン同士の友情マッチ
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先週末から今週水曜まで関西地方に出張してきました。姫路、神戸、大阪、京都などを回ったのですが、今回の地方取材で最も印象深かったのが、22日に行われた大阪朝高と日本の高校選抜チームとの親善試合でした。
日本のメディアでも大きく報じられたのでご存知の方も多いと思いますが、今年の第90回「全国」高校ラグビー選手権大会の2回戦で頭部を強打、脳震とうと診断され、次戦以降のゲームに出場することができなかった大阪朝高3年の権裕人選手のために組まれたものです。大阪朝高の呉英吉監督が権選手の最後の花道を飾ってあげたいと、日本の各校に呼びかけて実現しました。
選手権大会出場校を中心に、優勝した桐蔭学園の竹中選手やベスト8の東海大仰星の小原選手など強豪7校の16人が参加。当初は東福岡の水上選手や桐蔭学園の松島選手も出場する予定でしたが、諸般の事情で実現しませんでした。しかし、高校ラグビー界を代表するビッグネームが趣旨に賛同し、はるばる日本各地から駆けつけたことは権選手の人柄によるところが大きいでしょう。そして、ラグビーの「ノーサイドの精神」の素晴らしさをこれ以上ない形で見せてくれたと思います。掛け値なしに、心が温まるいい話です。両チームの選手はみないい表情をしていました。観戦に訪れた同胞や日本の人々も笑顔でした。
チーム内だけではなく、ライバルや他校の選手を仲間として思いやる気持ち、一緒にプレーしたいと思う気持ちが今回の試合を実現させたのではないでしょうか。スポーツの素晴らしさを改めて感じるエピソードだと思います。
付け加えるなら、権選手を含めた大阪朝高ラグビー部が持つ魅力が今回のような場を準備したように思います。桐蔭の竹中選手は、「ラガーマンの見本のようなチーム。実力もそうだけど、常に相手を尊重するチーム。だから僕たちも彼らを尊重したくなる」と大阪朝高の印象を語っていました。竹中選手の発言からも、大阪朝高ラグビー部のラグビーに対する真摯な取り組みの一端を垣間見た気がしました。実力もそうですが、人間性においても秀でたチーム。それはウリハッキョの民族教育を通じて育まれてきた部分が大きいのではないでしょうか。
「スポーツが世界を変える」と無邪気に言うことはできませんが、少なくともスポーツはさまざまな政治的しがらみを超えて、人々を結びつける力を持っている。そしてそれが現状に一石を投じ、変革の小さな一歩にもなりうるということを感じさせてくれた光景でした。
試合終了後、東大阪市内にある焼肉店で選手、保護者参加の食事会が開かれました。私もバスで選手らと一緒に店に向かうつもりだったのですが、試合会場での取材が長びいてしまい、乗り遅れてしまいました。詳しい場所を聞いていなかったので、どうしたものかと思案していると、その直前まで取材していた権選手のアボジが「便利なところまで送ってあげるから、車に乗っていきなさい」と一言。
おかげで車中、いろいろな話を聞くことができました。花園にかける権選手と家族の思い、脳震とうと診断された日のこと、出場への道が絶たれた無念さなど。聞けば、ご本人も学生時代ラグビーをやっていたとのこと。ウリハッキョのラグビー部がさまざまに困難な条件の中で2年連続ベスト4入りしたことの意義、そしてこの日のような友情マッチを可能にしたラグビーというスポーツの魅力を懇々と語ってくれた姿が印象に残りました。
権選手自身もこの日、さまざまな場面で「感謝」という言葉を繰り返し口にしていました。そして「試合に出られなかったあの時の悔しい思いは決して忘れない。それをバネに大学ラグビーで暴れたい」とも話していました。
この日出場した選手たちの多くはラグビー強豪大学への進学が決まっています。ライバルとして、チームメイトとして大学ラグビーの舞台でもお互い切磋琢磨していくのでしょう。彼らの今後のさらなる活躍を期待したいと思います。(相)
感動&感謝
感動の放送でした。
私なりには尾道高校の選手がアップで出てきたのでより一層感激しました。
広島ではラグビー熱は余り高くなかったのですが、今回の放送でラグビーを通じてスポーツの友情が教えられました。
学ぶべきものがたくさんありました。
ありがとうございました。