内部被曝
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「内部被曝の脅威」という1冊を読み終えました。
この本は2005年につくられたものですでに4刷目に突入しています。
2005年当時に目にしたとしても、明らかに手にとってはいなかったでしょう。
原爆の摂氏1万度以上もの熱と爆風がもたらした被害が「第1の被ばく」ならば、
その後の「第2の被ばく」が本書が言わんとする内部被曝です。
そして、「ヒバク」とは何も一部の人たちの話などではなく、私たちが常日ごろからさらされている脅威だということをおもいしらされ
自分にとって、ある意味今までで一番センセーショナルな内容の本でした。
「内部被曝」について非常に曖昧な解釈しかなかった自分への備忘録として、
ここに主な内容をまとめたいと思います。
△内部被曝のメカニズム
そもそも、内部被曝の原因となるのは「放射性埃」から出る放射線。
放射線には色も匂いもなく、肌で感じることもできません。
体外に放射線を発射する源があって身体の外から飛んでくる放射線に被ばくすることを「体外被爆(※「爆」の漢字に注目)」といい、
それに対し、体内に摂取された放射性物質が放射線を発しながら肺と胃から血液に運ばれ、全身のどこかの組織に付着し、ゆっくりと体細胞を傷つけていくのが「内部被曝」です。
人体には細胞修復機能があって、放射線がDNAを直撃したとしてもある程度修復され、修復されなかった細胞も死ぬといわれてますが、
内部被曝の場合、体内に取り込まれた放射性物質がずっと放射線を放射し続けるため、その修復能力がどこまで機能するのかという問題があります。
とくに体の中で細胞分裂の速度が速い場所では、被ばくした細胞の傷の修復が追いつかないまま細胞が複製され、細胞分裂のたびに自然拡大する可能性があるというのです。
そうなった場合、どのような被害が生まれるのかは、本書に詳しく載っています。
しかし内部被曝の有害性については、放射線被害をめぐる加害者側と被害者側で意見が真っ二つに分かれてきました。
加害者側は、被害を与えるのは体外からの高線量放射線だけで、体内にはいった放射性物質からの放射線は低線量(微量)であり、被害は一切無視できると主張する。被害者側は、内部被曝は体外被爆と全く異なるメカニズムで細胞を破壊し、微量でも重大な被害が起こると訴えている。それを裏付ける研究が数多く報告されており、また、世界的規模での核実験および諸々の核施設の内外に発生している膨大な被ばく者の数がこれを証明していると主張している。
内部被曝の問題は、放射線被害をめぐる加害者と被害者の国際的な規模での論争の焦点である。この論争に終止符をうつためには内部被曝のメカニズムそのものの解明が必要とされるが、内部被曝に関する研究の成果がなかなか認められない複雑な事情、そして技術的な困難が横たわっている。(76ページより抜粋)
本書では内部被曝の被害を裏付ける研究報告や世界中にいる被ばく者の実態、そして内部被曝がなかなか表に出てこない「事情」について具体的に指摘しています。
△ヒバクはすでに世界中で起こっている
本書ではまた、すでにヒバクは世界中に持ち込まれているという現実についても書いてありました。
中でも一番驚いたのは、放射能で汚染された穀物の多くが、日本に輸出されているという事実でした。
アメリカ最大の核施設があるハンフォードは、原爆を製造した時から何十年もの間、原子炉からさまざまな種類の放射性物質を放出していました(放出量の総量はスリーマイル島の事故の1万倍!)が、
そのハンフォードの風下にある広大な砂漠を穀倉地帯へと開拓するプロジェクトが、なんと政府主導で行われました。
そこで作られたりんご、じゃがいも、小麦、コーン、牧草、蕎麦などあらゆる穀物が海外へ輸出されているそうです。
その大部分を買っているのがファーストフード産業と日本の商社だといいます。
汚染作物は世界中を今もめぐり続けているのです。
このような事実は、普通に生活している私たちには全く知らされてきませんでした。
アメリカには乳がん死亡増加の原因として、死亡者の住む郡と原子炉の距離が相関していることを示すデータもあるといいます。
人類史上初めて原爆をつくったアメリカ。長崎に投下された原爆を製造する計画を主導した科学者は、
原子炉で作業をした後は必ず、体内の重金属を排出させる点滴治療を受けていたそうです。
当時の科学者たちはすでに自分たちが被ばくしていること、それも内部被曝していることを知っていたのです。
しかしアメリカでは、内部被曝の危険性について長い間「隠蔽」されてきました。
広島・長崎で起きた内部被曝の被害についても、当時の占領米軍は認めようとせず、それらを排除してきたのです。
内部被曝の人体に与える影響が明らかになれば、あらゆる核開発の障害になることを想定して、意図的に隠蔽してきたのです。
今回の福島第1原発の事故によって、大量の地下水が汚染されたといいます。
これは事態の重大さを物語る一つの指標です。
いったん汚染された大地や水を浄化する技術は、今のところ開発されていないということも併せて強調しておきたいと思います。
さて、長くなってしまいましたが、震災から3ヵ月が経った今、私たちは「放射能」という言葉にずいぶん「慣れて」しまったと思うんです。
そして、どんどんその言葉の本質を見過ごしていってしまい、ふたたび全国の原発が再稼動され、3月11日以前と何ら変わりない状態に回帰していく…、こんな恐れが十分あるのではないでしょうか。
原子力は重要なエネルギー源、などと、あたかも私たちのために存在するかのように思えるかもしれませんが、
「絶対に原発を失くしたくない人たち」が現実にいて、そのためにいろんなことを誤魔化し続けているということを知っておかなければならないと思います。
本の著者でもある鎌仲ひとみさんが製作した映画「ヒバクシャ 世界の終わりに」も観たいと思います。(里)
なるほど。
とても勉強になりました。
私も読んでみたいと思います。
kyongsimさまへ。
コメント、コマッスムニダ^^
私も、できればもう1度読み返したいと思います。