福島第１原発事故から３ヵ月以上が経ったが、まったく収束する気配はなく、ますます放射性物質が拡散、被害が拡大している。

 　事故以前は、原発や放射能について、あいまいにしか知らなかったが、この間、月刊イオでの専門家へのインタビューなどを通して、知識をそれなりに積み上げるようになった。また、日本における原発の歴史、原発の経済的側面、原発に見られる大都市による地方都市の搾取、原発労働者の実態などについても理解を深められた。原発事故を契機に、原発について関心を持つようになった、より知るようになったという人は多いことだろう。

　６月11日は、原発事故からちょうど３ヵ月ということで、日本の各地で反原発の集会やデモが行われた。もっとも規模が大きかったのは新宿で行われた「6.11新宿・原発やめろデモ」だったが、私も現地に出かけてみた。集会とデモの様子を見ての感想を、今日も思いつくままにだらだらと書きたいと思う。

 　今回現地に足を運んだのは、日本で１万人以上が集まり社会問題に対して何らかの行動を起こすということが、そうめったにあることではなく、ぜひ見ておきたいということが一つ。
　もう一つは、ヘイトスピーチに反対する会という団体が「「6.11新宿・原発やめろデモ」に対する公開質問状」というものを出していたからである。その内容について詳しくは書かないので、ヘイトスピーチに反対する会のブログをぜひご覧ください。 http://livingtogether.blog91.fc2.com/blog-entry-96.html

　当日は、雨も降らず適当に曇っていて、絶好のデモ日和であった。新宿中央公園で行われた集会は、２時ごろ特に開会宣言をするわけでもなくスタート（こちらが聞き逃したのかも）。会場には奇抜なコスチュームをした人たちが数多くいて、自分の存在をアピールしていた。中には日の丸を掲げる人も。　何人かが登壇しアピールするも、後ろのほうにいる人には聞こえず、また、特に聞いていない様子だった。そして、なぜかわからないが若い女性が「兔追いしかの山…」の歌をうたう。

 　全員が集会に参加しているのかと思ったがそうではなく、集会場の裏では、音楽を大音量で鳴らして若者が盛り上がりながら、デモの隊列をすでに組んでいた。

 　３時ごろにデモ隊の先頭が出発する。いくつかのブロックを作って行進する。最初は一つのデモ隊としてまとまりがあったが、繁華街に入ると警察がデモ隊を分断してブロックとブロックの間の距離が随分とあいてしまう。これに関しては、これまでの反原発デモでも同じことがあったようで、デモを小さく見せるための警察の策動だという指摘が多くなされている。

　デモ隊も多いが、警察の数も半端なく多かった。制服、私服合わせて、千人近くはいたと思うが、これだけの警官を一度に見るのは初めてであった。

　デモ隊の３ブロック目くらいに、大音量でラップのような音楽を流しながら行進する一団があった。そこは若者に一番人気があるようで、多くの若者がノリノリで奇声を上げ踊りながら歩いていた。途中からはそれぞれがコンビニなどでビールなどのお酒を買って飲みながらデモしていた。中には缶入りマッコリを飲んでいる人、ワインのビンをラッパ飲みしている人も。お祭感覚で参加している人も多かったのではないか。

　デモのゴールはアルタ前。普通、デモはゴール地点で流れ解散となる。しかし、参加者のほとんどはアルタ前広場から去ろうとしなかった。ある一画では主催者が主導してアピールしていたり、ある一画ではまったく別のアピールをしていたり、ある一画では音楽を鳴らして踊っていたりと、無秩序状態であった。アルタ前広場に入りきれる人数ではなく、車道にも人があふれ出していた。

 　警察は、ただただ秩序を維持することに懸命であった。デモの目的はまったく関係なく、ただただ無秩序状態が作り出されることに危機感をもっている感じがした。

　この日のデモを見て感じたことは、大規模な人間が集まり何かの社会的な問題を訴え行動することに、日本人は慣れていないということだ。

　韓国では現在、大学の授業料引き下げを訴えるためにソウルで大規模なデモが連日行われている。10日のデモでは５万人が集ったという。これまで韓国では何度もいろんな社会問題で大規模デモが行われているが、それらの映像を見ていると、韓国と日本の大規模デモの慣れ具合の差がよくわかる。

　最初に書いたように、福島第１原発事故は収束する気配を見せず被害はどんどん拡大している。人々の反原発の思いはどんどん広がっていくのは間違いない。また、ただ「放射能が怖い」というところから、原発のもつ様々な問題点への理解が深まっていくだろう。日本政府も財界も、そう簡単に「脱原発」を明確にしないだろうし、反原発運動が今後、拡大することはあれ、縮小するとは思われない。

　日本での反原発デモ（運動）は警察の思う秩序の限度を越えたもとなるのだろうか？　もしそうなったとき警察はどのように動くだろうか？　韓国での授業料引き下げを求めるデモ（10日）では深夜に参加者の一部が大統領府に向かって行進を始め、警官隊と衝突して72人が拘束される事態に発展したという。日本でも韓国と同じように警察はデモを強硬に押さえ込みにかかるだろうか？　もしそうした場合、参加者はどのような行動に出るだろうか？

 　そんなことを考えながら、人でごった返すアルタ前を後にしたのであった。（ｋ）