「慰安婦」問題をめぐって
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元「慰安婦」被害者のハルモニが公然と名乗り出て20年。「慰安婦」問題をめぐる動きが見られます。
韓国では8月30日、元「慰安婦」の賠償請求権について韓国政府が具体的な措置を取ってこなかったことは「元『慰安婦』の基本権を侵害している」とし、憲法裁判所が「違憲」と判断しました。この判決は有意義で、今後具体的な実行が伴うことを願うばかりですが、これまでの韓国政府の対処の遅さを度外視することはできないと思います。
一昨日の15日、韓国政府は前述の賠償請求権の問題で、日本政府へ政府間協議を提案。これに対し日本政府は「1965年の日韓国交正常化交渉のなかで解決済み」と、拒否する立場を示しました。
ニュースに触れ、この問題への日本政府の対応の不誠実さに、はらわたが煮えくり返る思いでした。依然として日本政府による責任の認定と公式謝罪、法的賠償がなされていない「慰安婦」問題。民主党は野党時代、野党3党の共同でこの問題の解決のための法案を8回国会提出しましたが、すべて棄却となりました。与党になり期待を寄せたものの、法案提出の兆しは一向に見えません。今回のことでかすかな希望も雲散霧消しました。
同じ日、賠償問題をめぐる政府と被害者との顔合わせで、元「慰安婦」のイ・ヨンスさん(83)は、「かわいそうなおばあさんが苦しみながら次々と亡くなっているのに、韓国政府はなぜ、今ごろになって日本と協議するというのか。賠償金は、みんな死んでから墓に届けてくれるのか」「1992年から19年間、在韓日本大使館の前で水曜集会を開いてきたが、その間、韓国政府は何をしていたのか。結局、裁判をしなければ胸の内は分からないのか」と涙を浮かべながら2時間近くも訴えたそうです。
また、看過できないのが「歴史教科書」問題です。この問題においては、日本の侵略の歴史を美化し史実を歪曲する教科書の、来年度からの使用が認められました。各地では教科書採択をめぐって対立などが起こり混迷しているようです。
採用された教科書には、歴史歪曲の筆頭である自由社、育鵬社版を含め、すべての社が「慰安婦」問題について一言も言及していません。「慰安婦」問題に限らず、強制連行・労働や領土問題など、あげればきりがありません。このような歴史を直視しない歪んだ史実を学ぶ人たちの、一人ひとりの誤った歴史認識が、根強い植民地主義を形成していくのだと思います。現に朝鮮人への蔑視や差別は、形を変えながら何度も繰り返されています。その最たるものが「高校無償化」からの朝鮮学校排除ではないでしょうか。
ハルモニたちが92年から始めた抗議の水曜デモは今年末、1000回を迎えます。問題の解決を見ぬまま、すでに多くの被害者が亡くなっており、ご存命のハルモニたちも80歳を越えています。リミットははるかに過ぎています。この問題においては1日、いや1秒でも早い解決が必要とされているのです。日本大使館の前で声を振り絞るハルモニたちを見るたびに、いい加減これ以上待つことなんてできないと、胸が締め付けられる思いです。(淑)