平壌でのサッカー朝・日戦
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11月15日に平壌で行われるサッカーワールドカップ・アジア3次予選C組の日本対朝鮮戦が間近に迫ってきました。
C組は各チームとも対戦相手が一巡して、3試合を終えた時点での順位は、2勝1分で勝ち点7(得失点差9)の日本が1位、同じく勝ち点7のウズベキスタンが得失点差2で2位。
朝鮮は1勝2敗の勝ち点3で3位にとどまっています。11日のウズベキスタン戦(アウェー)の結果次第では予選敗退が決定するという厳しい状況です。
平壌でサッカーの朝・日本戦が行われるのは1989年以来22年ぶり。「消化試合」になってしまっては興ざめなので、朝鮮代表には次戦に必ず勝ってもらって、日本代表をホームに迎えてほしい。
今回の朝・日戦では試合そのものに加えて、日本からのサポーター、報道陣の朝鮮渡航問題もクローズアップされています。
周知の通り、日本政府は06年の朝鮮のミサイル発射実験以降、朝鮮に対する制裁措置の一環として、朝鮮への渡航自粛を呼びかけています。藤村官房長官は11月1日、選手団やサポーター、報道陣に対する朝鮮への渡航自粛要請を条件付きで解除する方針を発表しました。ただし、解除の対象になるのは、代表選手団、同行する報道陣、日本サッカー協会が募集する公式ツアーの参加者のみ。公式ツアー以外の観戦ツアー参加者については、引き続き渡航自粛を要請するそうです。したがって、今回は試合観戦に限定した緩和措置、いわば「特例」ということです。
さる8月のアジアオリンピック評議会総会時には朝鮮代表団を、9月2日の日本開催の朝・日戦の際も朝鮮代表チームを「特例」として受け入れましたが、このようなケースが続くことによって、かえって日本が朝鮮に対して課している制裁措置の不当性、「アホらしさ」がより一層際立つのではないでしょうか。
一方、朝鮮側も日本のサポーター、報道陣を受け入れる姿勢を示しています。ただ、日本メディアの報道によると、サポーターの受け入れ人数を大幅に制限するそうで、現在までのところ、入国可能なのは150人程度になると伝えられています。
報道陣に関しても入国が大幅に制限されそうです。日本サッカー協会は朝鮮側に報道陣51人の渡航予定者リストを提出しましたが、許可が下りたのは10人だけだそうです。 新聞社の記者は1人も認められなかったとか。これとは別途に、今回の試合を生中継するTBSのテレビ中継クルーの入国は認められました。
朝鮮側は訪朝した日本サッカー協会職員に「1社から配信を受ければ十分報道できるのではないか」と説明したといいます。これについては、メディアや取材・報道に対する双方の見解の相違もあって、その是非はここで論じませんが、朝鮮側の説明にも一理あると思います。あくまで私個人の考えですが、「日本のマスメディアはどうせ同じ内容しか報じないし、サッカーとは無縁のくだらない質問ばかりするか、朝鮮国内の姿をセンセーショナルに書き立てるだけのレベルの低い記事しか出さないんだから、行かないほうがマシじゃない?」
日本側は受け入れ人数の拡大を求めて交渉を続ける方向だそうです。私としても、試合を観戦したい人たちが一人でも多く現地に入れるようになればいいと思っています。ただ、このような問題が持ち上がるのは、根本的には日本が対朝鮮制裁を続け朝・日関係が悪化しているということ、さらに言えば両国間に国交がないことに起因します。だから、まず日本政府は一刻も早く百害あって一利なしの対朝鮮制裁をやめて、関係改善に努めるべきであり、周囲もそのように促すべきでしょう。そうすれば、こんな大騒ぎをしなくてもすみます。
そして、今回朝鮮を訪れるであろう日本の一般の人びとが、限られた条件下ではありますが、朝鮮の姿を自らの目で見て、現在の朝・日関係の非正常な実態について考えることで、両国関係の改善を求める声が日本国内で少しでも沸きあがってくることを願っています。(相)