平壌はロンドン五輪で盛り上がってる?
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朝鮮滞在77日目。
平壌駐在勤務を終えて日本へ戻る日が近づいてきた。平壌発のブログも今回の更新分を含めてあと2回ほど。日本と朝鮮を行き来する仕事に就いていた当初は、帰還の日時が確定し出国日が近づくにつれて「日本に戻ったらあれを食べて、ここへ遊びに行って」などという考えが頭の中を巡っていたが、訪朝回数を重ねるごとにそんなことも少なくなっていった。
今あるのは「焦り」だ。滞在期間中に終えるべき取材がかなりたまっている。書き上げなければいけない原稿も。(時間的に考えて、全てこなすのは厳しいか…)。全部が無理なら、優先順位をつけてやっつけるしかない、とばかりにカレンダーとにらめっこしながらスケジュールを立てている。
最近、本場の犬料理や「うさぎ丸ごと一匹」(参鶏湯のうさぎ版)料理を食べたおかげか、夏バテもせず、体調はすこぶるよい。
今回のブログはロンドン五輪に関する平壌現地の話題を。
朝鮮民主主義人民共和国は8月2日現在、金メダル4つ、銅メダル1つを獲得し、「予想外の快進撃」を見せている。国別の金メダル獲得ランキングでも上位につけている。金メダルの数では、過去最も成績のよかった92年のバルセロナ大会での数に並んだ。このままの勢いで行くと記録更新は確実だろう。総メダル獲得数でも過去最高だったバルセロナ大会の9個を上回ることも十分期待できる。
それにしても、この序盤のメダルラッシュは市民はもちろんスポーツ関係者にとってすら予想していなかったようだ。この間、会う人々ごとに五輪ネタで話を聞いたが、みな一様に驚いている(もちろん、喜んでいるのは言うまでもないが)。
5つのメダルのうち4つを重量挙げ種目で取っているので、同競技の関係者は鼻高々だろう。実際に、重量挙げの元選手で五輪メダリストの一人は、56kg級で優勝したオム・ユンチョル選手を指して「隠れた優勝候補」と呼び、「してやったり」の表情を浮かべていたという。大会前、国内の記者数人に注目選手を聞いてみたところ、重量挙げでは62kg級で優勝したキム・ウングクの名前は出たがオム・ユンチョルを挙げた人は誰一人いなかった。知人の記者が協会の関係者にあたってもオムの名前は出なかったというから、まさに「秘密兵器」だったのだろう。
大会中盤に入って、ますます盛り上がりを見せるロンドン五輪。ただ、ここ平壌では盛り上がっているのかいないのか、いまいちよくわからない。もちろん、人々が関心を示していることは確かだが、それがなかなか目に見えない。
それも当然といえば当然か。自国選手の競技結果は新聞で逐一報じられ(団体競技での勝ち試合と個人競技でメダルを獲得した場合限定)、毎晩テレビで1時間ほどのダイジェスト番組が放映されるが、目に見えるのはそれくらい。ロンドンからの生中継もなければ、競技結果の速報がメディアに流れるわけでもない。新聞の号外やパブリックビューイングもないし、興奮した人々が街にくりだして大騒ぎすることもない。ただ、なぜか自国選手の活躍が巷間に広まるのは早い。新聞やテレビが公式的に報じるはるか前から競技結果を具体的なスコアつきで知っている人が少なからずいるのだ。インターネットもないのに。
それはなぜか。自国選手の成績を関係機関に電話で逐一問い合わせるスポーツマニアや、このたぐいの情報に比較的早くアクセスできる人々(スポーツ部門の関係者など)の存在が大きい。そこから口コミで広がるといった具合だ。人々が集まるお店などに速報が控えめに貼り出されていることもある。これはあくまで平壌での話で、地方の実情はわからない。
国の制度や文化が違えば「盛り上がり」の文化も違う。たぶん傍からは、朝鮮国内では五輪関係の話題などないように見えるかもしれないが、実はそれなりに盛り上がっているのだ。2012年を節目の年ととらえている朝鮮では五輪出場選手たちにかける人々の期待も大きく、選手たちも母国の期待は痛いほど感じている。
自分は平壌から選手たちの活躍を見届けたい。自宅でロンドン五輪をデジタルハイビジョン放送で楽しむ、というささやかな願いはたぶん実現しそうにない。(相)
おもしろい
北朝鮮でのオリンピック受容のしかた、面白いです。こういう記事が読みたい。
Unknown
五輪は、こちらでも当然ながら盛り上がっております。この間のなでしこ対南アの試合を見て、生まれて初めて「サッカー観戦面白い!」と思えました。水泳は元々好きだったんですが、サッカーは「何が面白いんじゃ!」っちゅう感じで、興味ないどころか大嫌いだったんですけどね。人の好みって不思議だな、と思う今日この頃です。