ノーベル賞の報
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「地球はなぜ、まるいの?」
「太陽と月はどうして合わさるの?」
「太陽はなぜ燃えてるの?」
「珍島犬は何科?」
8歳の息子が投げる質問に夕飯作りを急ぐ手が止まります。山中伸弥教授のノーベル賞受賞に沸く日本ですが、大人がとうの昔に捨ててしまった自然界の不思議を子どもは眩い感性でつかみ取ってきます。「なんで、なんで、なんで…」の嵐がわが家にも吹き荒れていますが、私はすべてがテキトーで答えを信用されていない情けない母親です。それにしても、ドキドキ、ワクワク。。。いいですね。先日も学校から、アリとダンゴムシを家に持ち帰って観察していたのですが、夕食中にアリとダンゴムシが虫かごから抜け出し、部屋を這っているのを発見!アタフタしながら家族中で捕まえました。
山中教授が「数ヵ月前には皮膚の細胞だったものから、ドクドクと拍動する心臓の細胞を作ることができる」というiPS細胞。「iPS細胞の技術を早く実用化し、病に苦しむ人の役に立ちたい」「iPS細胞とは別の研究で未知の課題に取り組みたい」「研究以外のことで何かすごいことをやりたい」と話す山中教授はとてもパワフルですね。また、その生い立ち、挫折の経験、基礎研究というトンネルのような長い道のりをどう歩んでこられたのか、彼を支える「チーム山中」の存在にも強い興味がわきます。
中学からラグビーや柔道に親しんでいた山中教授は、ケガや障がいを負った人を治療したいと整形外科医になったものの、執刀医として自分はぶきっちょだと判断。手術の腕だけでは治せない病気を治したいと思ったことが、今の研究につながったといいます。今回の受賞で大変な病に苦しんでいる人の存在を知ることができました。
人間は、太古から自然界の謎を解き明かすことに心血を注いできましたが、今後、何をどこまで知ることができるのでしょうか。同時に科学技術の発展で、人間は知ることによる「業」のようなものを背負わされている気もします。
最近、発表された出生前診断の報道にはとくに考えさせられてしまいました。実は私も2年前に羊水検査をしようかどうかを悩んでいた一人だからです。お産という大仕事の前に誰もが一度は立ちすくむと思うのですが、胎児がダウン症かどうかを、精度「99%」の確率で調べられるという出生前診断は、「元気な子を産みたい」という女性の気持ちをくすぐります。しかし、この精度は「100%」ではないし、「陽性」「陰性」が判明したとしても、出産時、出産後に何があるのかはわからない。「すべて受け入れ、母親となる覚悟をするものだ」と私は通院先の産婦人科医に短い言葉で伝えられ、ハッとしたものです。
同時に思い出すのが、ムジゲ会で出会ったオモニたちのたくましい姿です。心身にハンディを負った子どもを「授かり者」だとして、ともに歩む姿を見ながら、私はもう一つの幸せの形を学びました。もちろん、自分の身に降りかかってきた時に、同じようにできるのかと問われると即答はできません。
新たに知った知識、発明した技術をどう駆使するのか。現代は、人類の知恵のようなものが求められていると感じます。まずは理科の復習をして、息子の質問に少しでも答えるとします。(瑛)