アートが政治にどう関わるか
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前回のエントリの続きです。11月3日~11日まで岡山の旧・岡山朝鮮初中級学校で行われた「朝鮮学校ダイアローグ2012」に関してもう一つ記しておきたいことがあったので。前回のエントリの内容は、http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/4392e880dbb254b054d1bc1896076caa
第3回となる今回、主催者側から「アートと政治の関係性」についての問題提起がなされました。イベントに「朝鮮学校」というタイトルがついているのに、「高校無償化」など朝鮮学校をめぐる問題の背後にある政治的なものについて触れないのはおかしい。「ダイアローグ」というイベントは政治性を避けているのではないか―。前回のシンポジウムであったあるパネラーの発言が発端です。
アートが政治にどう関わるか、という問い。兵庫出身の美術家のソン・ジュンナンさん(26)が制作した「飛び出しトンム」(子どもの飛び出し事故防止のために設置されている「飛び出し看板」の朝鮮学校版)がこの問題を考える一つの実例として挙げられました。
ソンさんは学生時代に道の「飛び出し看板」を見たとき、「ああ、ここに描かれているのは日本人なんだな」と思ったといいます。スクールゾーンに「飛び出し看板」の朝鮮学校バージョンがない現実。道路に飛び出してくる子どもはチマチョゴリを着た朝鮮学校の生徒かもしれないのに。一般の日本人が「飛び出し看板」を見てもこのような考えを働かせることはまずない。意図的に排除しているのではなく、想像力の枠組みから完全に抜け落ちているから。いうなれば、「飛び出しトンム」は日本社会の想像力の枠組みがどのようにできているのかをポップな形で示している―。
もちろん、「高校無償化」問題の解決に「飛び出しトンム」が直接役立つかといわれると、そうではない。しかし、アートには政治的な立場を直接的に表現するやり方とは違ったメディアという側面ある。「飛び出しトンム」が直接何かを主張しているわけではないが、もっと深いメッセージを含んでいる。一方でありえたかもしれない世界を見せる―。それはもしかすると「共生社会」のような命題を何十回唱えるより人々に届くものがあるのではないか。
というようなことが参加者らの間で話し合われていました。正直、私には「アートと政治の関係性」について論じれるだけの力量がありません。が、今後も折に触れて考え続けていきたいと思っています。
その「飛び出しトンム」は現在、倉敷市水島にある現・岡山朝鮮初中級学校の校門前に立てられています。http://dialogueokayama.blogspot.jp/2012/11/blog-post_8.html (相)