朝鮮大学校朝鮮問題研究センター設立1周年記念シンポジウム
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先週の土曜、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター設立1周年記念シンポジウムが、東京・小平の朝鮮大学校で開催されました。
シンポジウムは同センター、立命館大学コリア研究センター、建国大学校統一人文学研究団の共催。朝鮮大学校の創立後初めて同大に南の学者を招いて行われた学術交流ということで、高い関心が寄せられました。
「海外コリアンの民族文化と統一意識―新しい“統合”モデルに関する人文学的省察―」と題したシンポジウムは、朝鮮半島の統一問題を、既存の社会科学的・イデオロギー的側面からではなく、人文学的、つまり「人」を中心に考察し、統一問題にアプローチするという点で、示唆的かつ実践的であるといえます。
第1部では6人の学者たちによる学術報告、第2部では総合討論が行われました。
報告は大きく分けると二つの観点からなされました。まず、在日同胞の民族舞踊(朝鮮大学校・朴貞順教授)、在日コリアンの美術(朝鮮大学校・李勲教授)日本の「韓流」現象と在日コリアン(立命館大学・佐々充昭教授)といった民族文化的側面。そして、コリアンの民族的アイデンティティの比較研究(建国大学・朴英均教授)、コリアンの分断・統一意識に対する比較研究(建国大学校・李炳秀教授)、朝鮮学校における民族教育(大谷大学・宋基燦助教)といった意識的側面です。
とりわけ、「朝鮮学校の『国民主義的教育』と『超国家的主体』の形成」と題した宋基燦助教の報告は、刺激的で興味深いものでした。報告のタイトルは非常に論争的であり、一見すると、朝鮮学校へ厳しいバッシングが向けられる日本の状況においては、誤解を招きかねないといえます。ですが、ユニークな視点と、民族教育と在日同胞の生活に根ざした研究は、自然と参加者の笑いを誘うほどでした。具体的には、宋助教の著書「『語られないもの』としての朝鮮学校」(岩波書店)を参照していただければと思います。
多様な価値観と生活文化を前提に統一問題を省察したシンポジウムは、総じて、統一は北と南だけの課題ではなく、植民地支配と分断という歴史を共有しながら全世界に散在している約800万の在外同胞とともに解決していく課題であり、在外コリアンも統一の主体であるという認識を与えてくれました。
また、12月の韓国大統領選挙を控え、朝鮮半島の歴史が動き出そうとしている現局面において意味のあるものだといえます。
そして朝鮮大学校朝鮮問題研究センターの設立の意義を再確認すると共に、今後、南北朝鮮と海外コリアンの学術交流と人々の交流、相互理解の拠点としての同センターの役割に、いっそうの期待が高まります。(淑)