チャーター機による強制送還反対し記者会見とデモ
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先週の水曜日、6日に東京・日比谷の弁護士会館で仮放免中の外国人らが記者会見とデモを行いました。
チャーター機による強制送還の反対と在留資格付与を求めたもので、デモには仮放免者や支援者ら約350人が参加し法務省前などを行進しました。仮放免者のデモは何度か行われていますが、今回のデモは、関東地区、東海地区、関西地区の仮放免者(この3地区に仮放免者の会という団体があります)が初めて一堂に集まったもので、画期的だったといえます。
「チャーター機による強制送還」と言っても、多くの人にはよくわからないと思うので、記者会見で訴えられた内容に合わせ説明し簡単に報告したいと思います。
記者会見にのぞむギリ・ナンダラスさん(左)ら仮放免者たち
この日の記者会見にはネパール国籍のギリ・ナンダラスさんら4人の仮放免者が参席しました。支援者がまず、非正規滞在外国人の現状や問題点について説明しました。次のような内容です。
日本には正規の滞在許可を持たない外国人が2012年初で7万人弱いるといわれています。そういう人たちのなかで、入国管理局により摘発され退去命令を受けても母国に帰れない人たちは、入管の収容施設に収容されます。中には何年も長期収容される人もいます。しかし、収容施設にも限界があり仮放免許可を受けて外に出て生活するわけですが、仮放免中の外国人を仮放免者と呼ぶわけです。
仮放免者は、就労資格がない、健康保険など社会保障制度から排除されている、月1度の入管局への出頭を義務付けられる、居住する都道府県外に移動するには事前に許可が要るなど、日常生活において大きな制約を受けています。仮放免者たちが自らの権利獲得のために2010年10月に作ったのが仮放免者の会です。
このような説明があったあと、今年1月初から2月末にかけて実施された仮放免者の生活実態調査(542人対象)の結果を発表し、仮放免者の人権侵害状況について具体的に明らかにしました。そして、非正規滞在外国人の強制送還の非人道性について語られました。
非正規滞在外国人の中には、帰国すれば政治的・宗教的な理由から弾圧を受けたり、家族の国籍が違うため強制送還されると家族がばらばらになったり、日本に10年、20年と住んで生活基盤が日本に根付いていたりと、さまざまな理由から帰国できない人たちが多くいます。個々の事由を無視し「不法」だからと強制送還することは極めて非人道的なことだと言えるでしょう。2010年3月には、日本人女性と結婚したガーナ人のスラジュさんが強制送還中、成田空港で命を落とすという悲劇も起きています。
強制送還自体が非常に問題なのに、今回、強制送還をチャーター機を使って100人規模で行おうという動きが出てきました。これまで強制送還は一般客も乗る航空機で一人ずつ送り返されていました。それを法務省が強制送還の「効率化」を図るとの目的で専用のチャーター機を導入するとの方針を固めたとの報道がなされました。記者会見とデモは、この報道を受けチャーター機による強制送還に断固反対する意志を示すために行われたものでした。
デモ出発前、日比谷公園に集まり、チャーター機による強制送還に反対する人たち
記者会見では、仮放免者たちが帰国できない事情をそれぞれ語りながら強制送還の非人道性を訴えました。
ギリ・ナンダラスさんは、ネパールのカースト制度のなか、身分の違う女性と婚姻したために迫害を受け生命の危険があるために日本にやってきました。家族はネパールにおり、自分が帰れば自分が殺されるし、自分はすでに死んだ人間となっている、自分の存在がわかれば、家族にも危害が及ぶと、帰国できない事情を訴えました。ナンダラスさんは06年に難民申請を出すが不認定となり、難民不認定取り消し訴訟でも敗訴しました。現在は難民再申請中です。
同席した弁護士は、法務省のガイドラインに沿っても在留許可が出されるべき人たちに出されていないこと、いろんな事情を無視し強制送還すること自体が問題であるし、ましてやチャーター機による一斉送還は、在留許可が出されるべき人たちもひっくるめて送還される可能性があるとして、その問題点を指摘しました。そして、在留許可を出すべき人にはすぐに出さないといけないと訴えていました。
仮放免者や支援者らの人間的な訴えで浮かび上がってきたのは、非正規滞在外国人をモノのように扱う日本政府の非人道的なあり方でした。(k)
人間であれ
日本人として、同じ人間としてとても恥ずかしい日本法務省がこの有り様・・・言葉が出ない