朝鮮戦争の停戦から60年を迎えて
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朝鮮戦争の停戦協定締結(1953年7月27日)からまもなく60年という節目を迎えようとしている。
朝鮮民主主義人民共和国では連日、首都・平壌を中心に各種の記念行事が催されている。27日には市内中心部に位置する金日成広場で大規模な軍事パレードが予定されている。
戦争のもう一方の当事国・米国と韓国も公式の記念式典やパレードなどさまざまな行事を準備中だ。韓国・聯合ニュースの報道によると、27日にワシントン市内で開かれる式典にオバマ大統領が出席して演説する。現職の大統領としては初となる参加だ。米政府高官や上下両院議員、軍高官に加え韓国側からも関係者が多数出席する予定で、過去最大の規模になる見通しだという。
軍人・民間人合わせて犠牲者数百万人という凄惨な戦いは半島全土が戦場となった。戦争による離散家族は1000万人に達する。同族相食む戦争とそれに続く冷戦下での北南対決が人々の心に刻みつけた傷跡はあまりにも深い。
停戦60周年に際して、この戦争は国際法上はまだ「終わっていない」という事実をあらためて思い起こすべきだろう。
そして、朝鮮半島の分断に責任を負うべき旧宗主国・日本は現行憲法施行のわずか3年後に米軍の出撃基地、補給基地として機能し、旧軍人をはじめ少なくない人員が輸送や機雷除去に動員されるなど、戦争に積極的に加担した事実も指摘しておきたい。「朝鮮特需」は敗戦で荒廃した日本経済が息を吹きかえす決定的な契機となった。にもかかわらず、日本でこのような事実は周知されておらず、この戦争が自国の戦後史の中でどのような意味を持つのかを考え、地域情勢の緊張緩和に貢献しようとする動きも鈍いといわざるをえない。
東アジアにおける冷戦体制を激化させ、分断を決定的なものにした朝鮮戦争は決して過去の歴史ではない。それはいまだ決着がついていないばかりか、いまだ冷戦体制から抜け出せていない東アジアのあり方を現在においても規定している。そして、分断の固定化と北南対立は在日朝鮮人社会にも暗い影を落とし続けている。
朝鮮はかねてから協定の当事国である米国に向けて、停戦協定にかわる平和協定を締結し、戦争を完全に終わらせるべきだと重ねて主張してきた。60周年という節目を機に、長きにわたる朝米間の対立に終止符を打ち、平和協定の締結に向けた対話が進むことを願うのは筆者だけではあるまい。
イオ来月号の特集では、その朝鮮戦争を米国との関係を切り口に取り上げる予定だ。この問題を正面から取り扱うのは初めてということもあって試行錯誤の連続だが、乞うご期待を。(相)
最後に、日本国内で行われる関連イベントの告知です。
①朝鮮戦争停戦60周年記念学術シンポジウム「朝鮮戦争-戦争・停戦・平和」
日時:7月27日(土)、18時~20時30分
場所:国際文化会館講堂(都営大江戸線「麻布十番」駅徒歩5分)
報告=「朝鮮戦争の本質と停戦過程の特徴」(和田春樹・東京大学名誉教授)、「朝鮮戦争を終わらせる平和体制の考察」(文正仁・延世大学教授)、討論者=小此木政夫・九州大学特任教授、李鍾元・早稲田大学教授、司会=木宮正史・東京大学教授
問い合わせ=日朝国交促進国民協会(TEL&FAX 03-3922-1219)
②朝鮮戦争停戦60周年 ソウル-平壌-東京リレー国際シンポジウム
日時:8月1日(木)、17時~20時
場所:学士会館210号室(地下鉄「神保町」駅徒歩1分)
基調報告=ラムゼイ・クラーク米元司法長官、ミシェル・チョスドフスキー・オタワ大学名誉教授、コーディネーター=康宗憲・韓国問題研究所所長(早稲田大学客員教授)、パネリスト=ブライアン・ベッカー・反戦反人種差別行動事務総長、鄭己烈・清華大学客員教授、浅井基文・元外務省地域政策課長、金英子・朝鮮大学校教授ほか
問い合わせ:実行委員会(TEL 080-5465-0914、FAX 03-3814-4154
Email onekorea.hana@gmail.com)