8.14日本軍「慰安婦」メモリアル・デーに際して
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8月14日の第1回日本軍「慰安婦」メモリアル・デーを前後して、日本をはじめ韓国、台湾、インドネシア、アメリカ、ドイツ、オランダなど世界各国でさまざまな連帯行動が行われました。私も東京ウィメンズプラザ・ホールで開かれた国際シンポジウム(11日)と、新宿で行われたデモ行進(14日)に足を運びました。
11日、国際シンポジウムには350人が集い、会場内には各国の日本軍「慰安婦」被害者らの肖像や被害者らの絵が掲げられていました。
1部ではフィリピンから来日したサバイバー、エステリータ・デイさん(83)が、14歳で日本軍の駐屯所に連行され性奴隷を強いられ、長年夫にも子どもにも言えず苦しんできた自身の被害を証言し、被害が二度と繰り返されないよう日本政府に対し謝罪と賠償、歴史教科書への記載を訴えました。
声を震わせ、涙を拭いながら証言するエステリータさんの隣で、支えるように向き合っていたのがフィリピンの支援組織「リラ・ピリピーナ」のレチルダ・エクストレマドゥラさんでした。レチルダさんはフィリピンにおける被害と運動の現状を報告し、「日本市民が立ち上がれば日本政府も動かざるを得ない。日本市民が国内で運動を進めてほしい」と締めくくりました。
2部では元国連安保理議長のアンワウル・チャウドリーさんが基調講演を行い、韓国から来日した挺対協の尹美香代表、京都大学の岡真理さんがそれぞれ発言し、その後討論が行われました。
討論では、日本軍「慰安婦」メモリアル・デーを国連記念日にすることの意義や、ネーミング(メモリアル・デーにはまだ正式な名前がない)について、具体的な運動の方法など多様に話し合われました。
尹美香代表は「この運動は、度重なる政治家による妄言や安倍政権による河野談話見直しなど歴史歪曲の動きに対し、制御装置として、再発防止装置として働くはずだ。例えば韓国、台湾、日本、フィリピンなど各国で日本軍『慰安婦』メモリアル・デーを国連デーとする決議を採択する運動を進めてはどうか」と話していました。
岡真理さんは、国連デーに定められたパレスチナの記念日を例に挙げながら、「毎年国連においてレセプションが開かれているが、最悪を更新し続けているパレスチナの現状を考えれば、記念日が国連の単なるアリバイ証明になっていると考えざるを得ない。国連記念日に定めることによって実際に『何が実現されているのか』を問うことが大切だ」と主張しました。
一方、14日、新宿で行われたデモ行進には250人が参加。午後6時半、参加者らは柏木公園を出発し、ネオン光る真夏の新宿の街を「日本軍『慰安婦』メモリアル・デーを国連記念日に!」「日本政府は事実を認めろ!」「謝罪と賠償を!」などシュプレヒコールを叫びながら行進しました。
デモ行進は、歩道フェンスを挟んで終始「在特会」と対峙するような形で進みました。そこには警官らはデモの隊列を圧制し、他方マスコミは在特会に群がる、という不気味な構図がありました。それが日本の民主主義の状況を物語っていたように思えます。
シンポジウムの日、尹美香代表が真っ先に話したのは、日本軍「慰安婦」被害者である李容女さんの訃報でした。シンポジウムの当日の午前2時に亡くなられたそうです。87歳でした。
またシンポジウムには、フィリピンからもう一人のロラ、ピラール・フィリアスさんが来日する予定でしたが体調不良のため急遽来日を中止し、シンポジウムにはビデオメッセージが寄せられました。
さらに支援者のレチルダさんのお話の中で、フィリピンで名乗り出た被害者174名中、73名が他界し、現在101名がご存命であること、高齢や認知症などさまざまな理由によりその中でも活動が可能なのは10名にも満たないという現状を知りました。どの国においても証言者の減少は等しく、被害者の存命のうちの被害回復が急がれる切迫した現状を思い知らされました。
昨年12月、韓国、台湾、フィリピンの日本軍「慰安婦」被害者と各国の支援者が一堂に集まったアジア連帯会議において日本軍「慰安婦」メモリアル・デーに定められた8月14日は、1991年に金学順さんが勇気ある告発をした日として多くの人に記憶されています。それはその後の運動においてきわめて重要な出来事であったことは間違いありません。
しかし同時に、1991年よりももっと前の1970年代、被害者の誰もが名乗り出られなかった時代に、自らの被害を証言した女性が沖縄にいたことを想起しなければなりません。冷戦と分断状況下、東アジアの矛盾の中で当時も今も奉奇さんの存在は不可視化されていると思えてならないのです。奉奇さんの存在を、そして生前奉奇さんが総聯の支援者との出会いの中で朝鮮半島の統一を願っていたことを、同じ在日朝鮮人である私たちがしかと記憶し、伝えていかなければならないと、在日朝鮮人の一人として痛みを持って感じています。(淑)