国籍主義と所属協会主義~スポーツの国家代表について
広告
先日、ラグビートップリーグのヤマハ発動機ジュビロに所属する徐吉嶺選手を取材しに、同チームの本拠地である静岡県磐田市まで足を延ばしました。
愛知朝鮮中高級学校、朝鮮大学校を経てジュビロで7年目のシーズンを迎えた徐選手。現在、トップリーグのプールBで3勝1引き分けの2位につけるチームの中心選手として活躍しています。
その徐選手ですが、11月2日に秩父宮ラグビー場で行われる世界王者ニュージーランド代表(オールブラックス)とのテストマッチに臨む日本代表候補38人に選ばれ、チームの強化合宿にも参加しています。
周知のように、IRB(国際ラグビー評議会)は国家代表チームに関して国籍主義ではなく、所属協会主義(地域主義)を掲げています。ざっくり言うと、国籍に関係なく、それぞれの国でプレーしている選手が代表に選ばれる、というものです。日本ラグビー協会規約は第176条で日本代表選手として選出される資格を、「日本で出生している、又は両親、祖父母のひとりが日本で出生している、又は第12章に定める登録を行った後引き続き満3年以上継続して日本に居住している選手」と定めています。ただし、一度その国の代表になると、それ以降ほかの国の代表にはなれません。ちなみにほかのスポーツでいうと、サッカーは国籍主義になります。
「多国籍編成が当たり前」というのが世界的なラグビーの文化であり、ラグビーにおける○○国代表チームは○○人代表チームではなく○○国ラグビー協会代表チームと表現したほうが正確かもしれません。日本のみならずほかの多くの国でも外国出身選手(当該国の国籍取得者含む)が国家代表チームに少なからず混じっています。ちなみに、オールドカマーの在日朝鮮人選手は、「日本政府より特別永住権を認められた在日外国人は除く」という日本ラグビー協会の外国人選手の定義(規約97条)によって、一般の外国人選手とは区別されています。
この「所属協会主義」に対する是非についてはいろいろ意見があると思いますが、今回そこには立ち入りません。
そんなユニークな規定を持つラグビーの世界で活躍する同胞選手は国家代表チームに対する思い入れも他の団体スポーツの選手とは違うはず、そんな興味から徐選手の取材を思い立った次第です。
私が調べた限り、過去に在日朝鮮人としては韓国籍の豊山京一氏が80年代初めに日本代表になったことがあり、近年でも朝高出身の選手たちが世代別チーム(高校やU-23など)の代表に選ばれたことはありますが、朝高→朝大出身(さらに「朝鮮籍」)の選手がフル代表に選ばれたことはありません。徐選手が選ばれれば初になります。オールブラックスの来日は1987年以来、なんと26年ぶり。個人的には、朝鮮学校出身のラガーマンがこのような大きな舞台に立つ姿を見てみたい。
昨日のエントリで(瑛)さんが書いていたように、次号の特集は「スポーツと政治・考」。徐選手をはじめ在日スポーツマンの話も載ります。乞うご期待。(相)