ネパール学校・エベレスト・インターナショナルスクール
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先日、日本で、いや、世界で初めてとなるネパール学校に見学に行ってきました。1990年の入管法改訂を受け、日本にはブラジル、ペルーの方々が増えることでブラジル学校が急増したものの、リーマンショックの影響から多くが帰国。ブラジル学校も大きく数を減らしました。
だからといって外国人学校のニーズが減ったわけではありません。日本に暮らす外国籍住民は、2008年の221万7426人をピークに減り続けていますが、総人口に占める比率は1.63。この比率は日本の人口減とともに増えていくことでしょう。
そして、現在日本に暮らすネパール人は2万383人(2011年末現在)。10年前の2001年が4081人なので、5倍に増える勢いです。東京には7752人が暮らしています。
ネパール学校・エベレスト・インターナショナルスクール(東京都杉並区)は、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩2分ほどの便利な場所にありました。今年4月に開校し、現在は4、5歳児が11人、児童が35人の計46人が学んでいます。杉並区のみならず、豊島・中野・台東区、遠くは千葉県の松戸、埼玉の浦和からも子どもたちが集まってきており、スクールバスも運営。教員は8人で、5人がフルタイム、3人はパートで雇っているそうです。
学校は3階建ての建物で、1階には、4、5歳の子どもたちの保育所がありました。丁度昼寝から覚めた子どもたち。子ども用のマットが、所狭しと並べられていて、窮屈そうでしたが、子どもたちは笑顔で大勢の来客を迎えてくれました。
学校の建物は、元々新聞配達職員の住居を兼ねた場所だったそうで、ひと部屋は4畳半ほどの広さです。見学中、子どもたちがネパールの踊りを披露してくれたのですが、どうしても教室が狭いので、のびのび踊れません。東京都内のインド学校を取材に行った際、ひとつの部屋を3つに区切って授業を同時進行していたことを思い出しました。元気盛りの子どもたちを、一日中部屋に押し込めておくことはできないので、最寄りの日本の公立小学校にお願いし、校庭を貸してもらえるよう相談しているとのことでした。
同校は、ネパール人向けの国際学校を目指しています。国際学校にしたのは、本国が2000年代から英語を重視し、英語を授業言語とする学校が増えているからだそうで、カリキュラムはネパール本国と同じものを取り入れています。授業は、ネパール語、日本語の時間以外はすべて英語。今、本国の海外校の認定を得るための手続きを進めているとのことでした。
シュレスタ・ブハール・マン理事長(40)、プラディップ・タパ校長(30)の話の中で特に印象的だったのは、なぜこの学校を建てなければならなかったのか、という点でした。
シュレスタ理事長は、「日本に出稼ぎに来て、ネパールに帰った時、わが子に『パパじゃない』『ママじゃない』と言われた親御さんたちの声を聞き、学校の仕事をできればと思いました。日本暮らしのなかで子どもたちは日本語しかしゃべれず、他の言語(ネパール語、英語)を忘れてしまう。自分の文化を学べる学校に入れたい、という親御さんの思いがありました」と自身もその一人だったと打ち明けてくれました。
「この学校にはネパールから連れてきた子ども、日本で生まれて日本の幼稚園や保育園に通っている子ども、どこにも通えていない子ども、そして、日本人の子どもと4種類の子どもたちが通っています」―。日本の学校に通っている子どもが「顔の色が違う」といじめられた話や、母親を日本人に、父親をネパール人に持つ子どもが、一方のルーツであるネパールの文化を受け入れられない、という話には胸が痛みました。そして、海外を目指すネパール人が増えるなか、世界で初めてネパール学校を建てたのは、日本の学校に「日本語の壁」があるからで、「ネパールの子どものニーズを満たすための学校を立てねば」との結論に至ったといいます。
外国人が海外で暮らす際、学校を建てる必要があるのは、日本だから―。この話はインド学校やブラジル学校でも聞いた話で、外国人共通の悩みだと感じました。
それにしても、外国人学校が正規の学校として認められない日本で、学校を作るのは大変なことです。
学校設立までの準備期間は2年半。在日ネパール人向けのメディアを通じて、「学校が必要なのかどうなのか」を聞くアンケートを集めたところ、「400人以上の人からポジティブな反応が返ってきた」そうで、「1年半、全力で動いて今年4月に開校できました」(シュレスタ理事長)
現在、学校は、NPO法人を設立し運営しているとのこと、ゆくゆくは準学校法人(各種学校)認可も取得したいそうです。阿佐ヶ谷駅の北側には東京朝鮮第9初級学校があり、地元の日本の小学校と実のある交流をしています。この日、ネパール学校を一緒に見学した人の中には地元の議員さんや自治体の外国人政策に詳しい研究者もおり、懇親会では、「議員で視察に来ます」「朝鮮学校の経験を学びに交流すればどうですか」など、激励のアドバイスが続きました。
開校当時は16人だった園児・児童数が年内には50人を超える予定だと言います。そして、子どもたちの成長とともに高校まで作っていきたいと!
パワーみなぎるネパール学校の皆さんでした。
12月7日には学校でバザーが開かれます。
ガンバレ!エベレスト・インターナショナルスクール!!!(瑛)
Unknown
>外国人が海外で暮らす際、学校を建てる必要があるのは、日本だから―
実際、日本は成熟した優れた文化をもつ国だとは思います。
ただ、近代化の過程があまりにうまく運んだため、一種のエスノセントリズムに冒されてしまっていますね(帝国時代にはついに狂信の域に達し国を滅ぼしたわけですが)。
「日本では外国人の子弟でも差別無く公教育を受けられます」という自慢?の言葉の倒錯ぶりに、文科省の役人も現場の教師たちも気づかないのでしょうか。「世界初のネパール学校」が生まれた国がなぜ日本なのか、彼らは研修のプログラムにでも組み込んで学ぶべきですね。