今年最後の「金曜行動」を取材して
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20日、文科省前で行われた今年最後の「金曜行動」を取材してきました。抗議活動に先立ち、朝鮮大学校の代表らが安部首相と下村文部科学大臣に宛てた要望書を職員に提出。4人が抗議文を朗読しました。
「平和と民主を掲げる日本の人々の良心に、私は問いたいのです。なんの罪もない幼き子どもたちがなぜに、差別の餌食にならなくてはならないのですか。みなさんのお子さんがそのような立場に置かれたら、仕方ないと泣き寝入りするのでしょうか」。
「私たちは血と涙で、自分たちが築き上げた朝鮮学校を守ってきました。これからも、次世代である私たちが自らの手で、朝鮮学校を守っていきます。私たちは、文科省のみなさんの良心に訴えます。『無償化』裁判の原告となった高校生の気持ち、文科省の前に立ち続ける私たちの気持ちを理解していただけるなら、朝鮮学校にも『無償化』制度を適用してください」。
朝大生たちは、自分の言葉で書いた抗議文を、何度も職員に訴えかけるように読んでいました。建物の外からは、「適用しろ!」「差別反対!」と、すでに集まった人々による抗議の声が上がり、朗読の合間にもどんどん大きくなっていくのがわかりました。しかし職員はただ省令を削除するに至った経緯をのべ、「それを踏まえて朝鮮学校を不指定処分にした」「審査基準に基づいた決定」という信じられないほど機械的な対応をしました。
目の前で自分自身の思いを語る朝大生たちの声も、今まさに文科省の前で差別反対を訴えている人々の声も、完全に無視されている、投げかけた言葉に対して真っ直ぐの返答が来ないその状況の意味が分からず、許せませんでした。要望書の提出が終わり部屋を出て行く朝大生たちの姿からは、強い憤りと悔しさが伝わってきました。
文科省を出ると、たくさんの人々が変わらず声を上げていました。朝大生のみならず朝高生や保護者、同胞、日本市民が何重にも列をなし、長く連なって叫んでいる光景を目の前で見て、身体がかっと熱くなりました。何人もの生徒や市民たちがメガホンを持って抗議する中、涙を流しながら懸命に制度適用を訴える朝高生の姿もありました。「私たちのアボジ、オモニたちは、私たちを朝鮮学校に通わさせるため一日中働いています! そこまでしてくれるのは、私たちを朝鮮人として育てるためです! 自分の民族を学ぶのが、そんなにいけないのですか!?」。何度も涙をぬぐい、大きく息を吸いながら一言ひとこと話す朝高生を、周りにいた朝大生が「頑張れ!」「そうだ!」と励ます光景に、やり切れなさやもどかしさ、悔しさといった色々な思いが重なりました。また、抗議する列とは別に「無償化」適用を求めるビラを手渡しする朝大生もいました。通行人や文科省の職員に無視されても、ビラを持つ手を何度も差し出す姿も深く心に残りました。
「どれだけ叫べばいいのだろう/奪われ続けた声がある/聞こえるかい? 聞いているかい?/怒りが今また声となる」―朝大生の合唱を聞きながら、先ほどの職員とのやりとりが思い出され胸が痛みました。しかし、横断幕を持ちながら叫び続ける参加者の姿をすぐ近くで写真に収めながら、また続々と列に加わって一緒に声を上げ始める人々の姿を見ながら、これだけたくさんの人が朝鮮学校に通う子どもたちのために今ここに集まっているんだと心強さも感じました。「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」の長谷川事務局長が「これは日本の民主主義と人権が問われる問題であり、こんな恥ずかしい状況を日本の中で放置してはいけない。良心を持つ多くの日本人が、みなさんと共に、最後の最後までたたかい抜くということをぜひ知ってください。そして一緒にたたかい続けましょう!」と呼びかける姿に力づけられた参加者も多いはずです。
この日の抗議活動には1600人が参加しました。人数が多いため、文科省の正面口と左右のブロックに分かれてそれぞれ抗議をしていたのですが、最後には全てのブロックで同時に声を上げ、歌をうたおうということになりました。そしてお互いの声を合わせるために、より一層大きな声が上がりました。朝鮮学校が「無償化」から除外されて約4年。この間、涙を流し、苦しみ、悔しい思いをしてきた数え切れない人々の叫びがここに集約されているように感じられました。日本社会がこの声を無視できなくなる日が、いつか必ずやってくるという確信も持ちました。その日まで、もう一人も諦めてはいけません。(理)