無償化裁判と私たち
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17日に東京で始まった無償化裁判。裁判には、東京朝鮮高級学校に通う高2、高3の62人の生徒たちが原告に立ちましたが、すでに始まった愛知の裁判では10人、広島では110人、九州では67人の朝高生・卒業生たちが法廷で闘っています。
今、この日本で、これほど多くの生徒が裁判の原告に立っているのは朝鮮高校をおいて他にない。本来なら、青春時代をただ楽しんでいればいい朝高生たちが、将来の進学や就職に悩みながら、裁判に挑む決心を固めた現実が、東京の提訴を通じても、重くのしかかってきました。
翌18日に文京区内では、東京朝鮮高校生の裁判を支援する会が開かれました。主催者たちの心配をよそに、現役の朝高生を取り囲むように、オモニやアボジ、先生や日本の支援者たちが席を埋めていました。用意した600の資料はなくなり、会場には立ち見の参加者が三重四重にも折り重なっています。生徒たちが矢面に立たないよう、生徒たちを絶対に守ろう、と大人たちは口々に決意を語っていました。いつも無償化の集会やデモで見る長谷川和男さんの日本社会への怒りの言葉も、いつになく熱がこもっていました。
東京朝高合唱部のみんなが歌ってくれた「ウリハッキョは私たちの故郷」。何度となく聴いてきたこの歌ですが、日本という国家が、10代の高校生たちに差別の刃を向けている張りつめた空気の中でも、この歌声を聴くと穏やかな気持ちになります。時代がどんなに厳しくとも上を向くことを教えてくれる、清々しい歌声です。
「時代は君たちを記憶するだろう」「後輩たちが君たちを見ている」―。東京朝高の慎吉雄校長が、生徒たちに託していた言葉が忘れられません。高校の頃に十指に指紋を押した屈辱、指紋押捺はおかしいと裁判に立ち上がったハン・ジョンソクさんの勇気、差別と闘わなかった自身を問い返す校長先生の言葉は、一人ひとりの気持ちを鋭く問うものでした。
裁判に立ち上がった生徒や保護者たちは、それでも不安でいっぱいです。この不安は、裁判を経験したことがない、ということだけではなく、無償化から朝鮮高校を徹底的にはずす日本政府、それを黙認する日本社会が変わらないことへの不安です。その不安をなくすためには、「無償化問題が人権の根幹にかかわる問題」(田中宏・一橋大学名誉教授)ということを、日本社会に伝えていかなくてはならない。「学ぶ権利は誰にでもある」ということを、あふれ返る朝鮮学校への偏見の中で、どう伝えていくかという厳しい課題に向き合っていかねばなりません。
今回の訴訟を支える弁護団は11人。行政訴訟に長けたエキスパートや枝川裁判を闘った弁護士ら、心強いメンバーの存在に私自身も力を得ました。弁護団の一人である李春熙弁護士は、「裁判に対する不安があれば、いつでも勉強会や懇談会を開きます。どんどんリクエストしてください」と話してくれました。
「裁判は、弁護団の先生方や原告だけの問題ではありません。それを取り巻く『私たち』の存在が、裁判の行方を左右すると言っても過言ではありません…命を生み育むものとして、この地から子どもたちを苦しめるすべての差別が根絶されるまで、日本中が子どもたちの笑顔と明るい未来でいっぱいになる日まで、心を合わせともに力強く歩んでいきましょう」(東京朝高オモニ会・朴洙元会長)
首都東京で裁判が始まったことで、無償化闘争の新たな章が幕を開けました。東京での裁判は、4月以降に本格的に始まります。
日刊イオをご覧の皆様。18日に結成された「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」にご加入いただき、法廷闘争をたたかう生徒たちを支えてください。4月から始まる裁判に参加し、無償化問題がこの社会で風化しないよう、社会に発信してください。(瑛)
「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」
HP:http://mushokashien.blog.fc2.com
Email:mushokashien@yahoo.co.jp
住所:〒181-0003 東京都三鷹市北野3-9-34
口座:ゆうちょ銀行振替口座 00130-7-708271(口座名:朝高生裁判を支援する会、他行からの振込は、〇一九店 当座 0708271)