謎の女性の正体
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昨年の5月、広島で行われた「朝鮮学校ええじゃないね! 春の平和パレード」を取材した時のこと。報道陣の中に1人、目立つ女性がいました。小柄で、ポニーテールで、カメラとリュックを持った綺麗な人。その人は、差別反対を訴える横断幕を持った同胞や日本市民、民族衣装をまとったウリハッキョの生徒たちをどんどん写真に収めていて、明らかに他の報道陣とは表情や動きが違いました。
初めての出張、1人で本格的に行う取材ということで、また、自分たちの問題を扱うという気持ちもあり、「負けてられない」と私も必死でシャッターを切りました。結果、自分の中では満足のいく写真を撮れたのですが、ライバル心を抱いていた当の相手はいつの間にかいなくなっていたのでした。
先日、朝鮮新報のHPを見ていて驚きました。1年前、広島で見た謎の女性の写真が掲載されているのです。その方はその方は林典子さんといって、世界最大規模の報道写真祭(13年フランス世界報道写真祭ビザ・プール・リマージュ報道写真特集部門)で最高賞を受賞したものすごいひとなのでした( http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/20140410riyo-2/)。
私は著書が気になり、正体が判明する直前にたまたま読んでいたのですが、身体ひとつで未知の世界に飛び込み、実体験を通してジャーナリズムの意味を会得したその行動力や意志の強さに感心することしかできませんでした。
彼女を見かけたときからおよそ1年が経ち、思いもよらず正体も判明し、あのとき声をかけて置けばよかったと少し後悔しています。またいつかどこかで会えるでしょうか。もしも会えたら、広島での姿と、著書を通してたくさんの刺激をもらったということを伝えたいです。(理)