映画「西便制」
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イオ6月号の特集は、「韓国映画と現代史」と題した映画特集。
特集では取り上げられていないが、私にとってのテッパンは「西便制(ソピョンジェ)」だ。
韓国で1993年に製作。日本で上映された時に母と一緒に見にいったのが、20年前のことになる。
訪れた劇場には、幸運にも主人公のオ・ジョンヘさんが来ており、生のパンソリを聞くことができた。足の先からジョンへさんの歌が電流のように全身に流れていったことを今でも思い出す。
西便制は、貧しいパンソリ芸人・ユボンが、孤児のソンファとドンホに芸を仕込みながら旅を続けていく物語。ソンファは才能豊かでユボンはソンファを懸命に育てていくが、ユボンはあまりの困窮生活に歌をやめてしまう。衝撃だったのは、ユボンが弟子のソンファに毒を飲ませて失明させるシーンで、ユボンは「恨に埋もれず、恨を超えろ」と言い残して死んでゆく。
光を失わせてまで、芸を極めさせようとする師匠と、それをわが運命とばかりに受け止めるソンファの姿に、私はただただ圧倒されたのだった。
朝鮮半島の旅芸人は、ナムサダン(男寺党)はじめ、最下層の賤民として扱われてきたが、彼らの芸は「サムルノリ」に象徴されるように、私たちにすばらしいものを残してくれた。チャンダンの調べを聞くと、今でも西便制のあのスクリーンを思いだす。(瑛)
Unknown
>「西便制」
この作品は、私にとっても韓国映画における屈指の「テッパン」です。
「珍島アリラン」を歌い踊りながら旅路を往く長回しは、三人が唯一笑顔を揃えるシーンであり、まるで、その後の人生の幸運を祈る時間であったような錯覚を鑑賞後に覚えました。
>幸運にも主人公のオ・ジョンヘさんが来ており、生のパンソリを聞くことができた。
すごい!それは本当に幸運でしたね。
映画特集、楽しみにしています
「西便制(ソピョンジェ)」大好きです。ユボンの子弟の叱り方が、ウチの祖父そっくりってとこも。「我らの歪んだ英雄」も大好きで、イオ特集に載ってたら嬉しいです。
ホンさんへ
コメントありがとうございます。
20年前の映画をタイムリーでご覧になっていた方がいて、うれしいです。映画から流れるウリマルに一世のハラボジやハルモにの姿が映り、知らぬ間に泣けてくることもありました。
「我らの…」は残念ながら載っていませんが、私も好きな映画です。もう一度、あの頃の映画をじっくり見てみたいです。映画はやはり映画館ですが…。
Rawanさんへ
コメント、ありがとうございます。
そのシーン、私も覚えています。辛い日常を吹き飛ばすような、それでいて3人の呼吸がそろった、ホッとできる場面でした。オジョンヘさん、今はどうされているのでしょうか。