イエスタデイ・ワンス・モア
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先週、完成したばかりのイオ8月号を一足先にお届けしてきました。巻末の「1世をキャンバスに」で作品を紹介してくださった方で、(愛)さんの大学時代のソンセンニムです(http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/2082f370b638bab8caa38524a2af2c9c)。
その日は私ひとりで伺いました。降りる駅を間違えてしまったため、炎天下の中15分ほどの道のりを歩いて向かうことに。途中、サングラスをかけ白のタンクトップ姿で自転車にまたがっているおじいちゃんがじーっとこちらを見ていました。目をそらした瞬間「おい」と声をかけられ、びっくりして見るとソンセンニムご本人。迎えにきて下さったみたいです。
自転車を押しながらすたすたと歩くソンセンニムに「健康ですね」と言うと、「色んな所に爆弾かかえてんだよ」と返しながらも、毎朝愛犬と一緒に近所を散歩していることを教えてくれました。また、そろそろ80歳というご高齢でありながら車も運転されるとのことでした。
ソンセンニムは、今もずっと絵を描き続けていらっしゃいます。「そういうものを一つ持ったほうがいいよ」という言葉に深く頷かされました。それが若さの秘訣かもしれません。作品は、実際に見たものを描く場合もあれば、人から聞いた美しい景色の話や面白い話をもとに、いくつかの資料と想像の力を借りて描きあげるものもあります。ソンセンニムのアトリエでそんなたくさんの作品に囲まれていると、一つひとつの絵に込められた物語を聞いてみたくなります。
ぽんと、一冊のアルバムを手渡されました。ソンセンニムご家族の思い出をまとめたものです。丁寧に一枚一枚はさまれた写真には、日付やどんなことがあったかを書いた紙が添えられていて、大切な思い出というのが伝わってきました。
ソンセンニムのアトリエではいつも音楽が流れているのですが、その時かかっていたのがカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」。初夏の夕暮れ、静かなアトリエ、セピア色の写真、そして不朽の名曲。偶然と知りつつ、(ニクい演出しますね~!)と心の中でつい笑ってしまいました。
とどめは最後のページに書かれていた「기억은 기억으로 머물 때 가장 아름다운것이다(キオグン キオグロ モムル テ カジャン アルムダウンゴシダ=記憶は記憶で留まるときが一番美しい)」。ソンセンニムが書き記した一文です。読んだ瞬間 …ジーン とこみ上げるものがあり、これには完全に参ってしまったのでした。(理)