りんごのおくりもの
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「りんごのおくりもの」(李錦玉作、朴民宜絵、朝鮮青年社)は好きな絵本のひとつで、先日、最寄りのハッキョの初級部(小学校)高学年生向けに読み聞かせをしてきた。
20数名いるなかで、この絵本を知っていたのは2名だけ。約20年前に出版された絵本だから当然だろう。みんな静かに聴いてくれたが、感想はいかに。。。
この物語は、なしの花のように美しいと評判のプニと、彼女に結婚を申し出た3人の男性の物語。プニは何の財産を持たない働き者のトルセと結婚することを決めたのだが、当時としては珍しい話だ。作者の李錦玉さんは、「昔の女性たちが自分の意志では望んでもかなえられなかった現実的な夢をプニィに託しているように思えてなりません」とつづっている。
朝鮮には、貧しい娘が最後には王妃になるとか、苦労の末にお金持ちと結婚した、というオチの物語が多いし、他の国にもシンデレラや白雪姫に代表される同様の話は山ほどある。この類の物語が多くの少女たちの「幸せ観」を形作っているのは確かで、お姫様願望がこの社会で途切れないのも悲しいかな現実…。
私たちの祖父母の時代は、結婚相手の顔も見ないで結婚を決めたというから、まだまだ、女性が自分自身の人生を切り開くまでには時間がかかるだろう。その点で、女の子たちがこの話をどう聞いたのか、いつか本音を聞いてみたい。
今週、終わりを迎えるNHKの朝の連続ドラマ「花子のアン」では、カナダの作家・モンゴメリの小説「赤毛のアン」を翻訳し、日本に紹介した村岡花子と歌人・白蓮という二人の女性にスポットがあてられている。
貧しい農家に育った花子に英語教育を施すチャンスを与えたのは、彼の父親だったし、日本が英米と戦争中に英語に携わっていた花子が「国賊」と攻撃された時代、彼女の翻訳を後押ししたのは、夫の英治だった。
小さな可能性を育てていくのは、やはりその人の可能性を、性差や持つもので限定しない、まなざしだろう。小学生の頃に読みふけった「赤毛のアン」を再び手に取りたいと思っている。(瑛)