東京で無償化裁判、大阪で補助金裁判
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10月1日、東京地裁で無償化裁判、そして大阪地裁で補助金裁判の口頭弁論が行われた。
私は62人の朝高生が原告となった東京の無償化裁判、(k)さんは大阪の裁判へ。
第3回の今日からは東京地裁で一番大きい大法廷が会場となった。344人もの人が列をなし、大法廷の98席中50席は、東京中高の生徒たちが席を埋めた。朝鮮大学校生が後輩に傍聴券を譲るなど、地裁では心温まる光景が繰り広げられていた。今まで3回ともはずれ続けているクジ運のない私だが、幼馴染が席を譲ってくれ、ありがたかった。
1、2回の裁判で朝高生側の主張と国側の反論が出そろったことを受け、この日は朝高側の弁護団が44ページにわたる準備書面と証拠を提出した。
3人の女性裁判官が入廷した後、大阪朝高出身の康仙華弁護士が準備書面に基づき主張した。
康弁護士は、「すべての者に学ぶ権利を」を理念とした高校無償化法の成立過程、朝鮮高校を念頭に置いた「規定ハ」が制定されるまでの経緯など、9点を主張した。東京朝高生たちはこの裁判で、国が朝高が該当する「規定ハ」を外したのは差別であり、法律違反だと主張している。康弁護士は、文科省の検討会議や審査会では、朝鮮学校の指定に向けて積極的な議論がなされており、審査会では朝鮮学校に法令違反の事実がないことが確認され、国が主張する「本件規定13条に適合すると認めるに至らなかった」というような事実が見られなかったと主張した。
閉廷後、弁護士会館で行われた報告集会で弁護団の喜田村団長が述べられたことが、裁判を理解するうえでのポイントになると思うので、以下に整理する。
(法廷では)何が一番問題ということを裁判所に説明しました。
一つ目に述べたことは、朝鮮高校は「規定ハ」の類型に従って、受給資格を得ようと申し出をしたのに、文科省は「規定ハ」それ自体をなくしてしまった。そうすると、朝鮮高校は未来永劫、このままだと受給資格が得られない。法廷では裁判長に、傍聴席にいる生徒さんを見てください、ここにいる生徒たちが誰も就学支援金をもらえないことになってしまうんだ、「規則ハ」をなくしてしまうことは、そういうことだと申し上げた。
高校無償化法とは、日本の高等学校と同じような同質の教育機関に通う子どもにはすべて支援金をあげます、という法律なんです。法律が一番上にあって、その下に規則がある。規則が法律に反してはいけない。
ところが、法律では、「すべての子どもに支援金をあげますよ」と言っていたのに、文科省が「規則ハ」を削ってしまったから、他の学校の子どもたちはみんな受けられるのに、「規則ハ」にグループ分けされる子どもはもらえない。これは明らかに高校無償化法が予定していたことと正反対です。みんなにあげましょうと言っているのに、特定の教育施設に通う子どもたちはダメだと言っているわけだから。「規則ハ」を排除したことは高校無償化法に違反する結果になりますよ、と言った。
2つ目には、13条の問題。高校無償化法の13条には、「指定教育施設は、就学支援金の授業に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」という条文があり、国は、朝高が就学支援金を授業料の支払いに充てることをしない可能性があると言っている。しかし、実際の所を考えると、就学支援金は子どもたちに対する支払いなわけで、授業料から就学支援金を減らせばそれで終わってしまう。それをやらなければ、保護者から問合せもあるだろう、そんなことをするはずもない。それなのに、あたかも授業料の支払いに充てないかも知れないというのは、根拠のないおかしな話ですよ、といった。
国が言っている二つの理由というのは、まったくおかしいですよねと申し上げた。
第3に、8月29日の国連・人種差別撤回委員会が無償化差別は人種差別にあたる、これはおかしいという懸念を表明したことを申し上げた。
この裁判は、原告と被告との間のことだが、それはひとりここだけの問題ではなくて、国際社会が日本を見ているし、被告の国は人種差別条約に基づいて人種差別を行わないことを積極的に進めていく義務を負っているのに、まったく反することをやっている。この事件は全世界が見ている。日本政府が負っている義務を本当に履行しているかを問われている。
裁判所にこの事件の深さ、広がりを理解していただこうと、この三点を申しあげた。
次回、第4回口頭弁論は来年2015年1月14日。同じく東京地裁の大法廷で行われる。今日の朝高側の反論に対して国側から反論が出される予定だ。
10月18日(土)の14時からは、都内で報告集会が行われるので、傍聴を逃した方はぜひ足を運んでみてください。(瑛)