コマプレスが来た!@三重
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今日は、三重県の四日市朝鮮初中級学校から届いた素敵なお話をご紹介します。
韓国で観客動員2万人を突破した、「60万回のトライ」。日本でも自主上映が続いていますが、三重で上映会を大成功させたお話です。(瑛)
コマプレスが来た!! ~ウリハッキョは2つとない大切な場所~
金琴純(四日市朝鮮初中級学校オモニ会会長)
10月29日。約5ヶ月に渡る準備期間の末、ようやくこの日がやってきた。映画「60万回のトライ」、三重県での自主上映会だ。「絶対これ三重でやる!」と思い立ったのは、GW中名古屋で上映された、同映画を見てから。今年度、四日市朝鮮初中級学校のオモニ会会長である立場をここでフル活用しようとひらめいた。
理由の一つに、名古屋での上映を三重のトンポ達がほとんど知らず見逃したことがある。トンポはもちろん、誰よりも自分の子供に見せたい、愛知朝高生の多くも見られなかったので同世代の彼らが見ずしてなんとする!!と三重上映会のイメージなど、一人でどんどん妄想を膨らませた。
さて、まずは誰を仲間にするべきか。そして監督とどうやって連絡を取ろうか…。今劇場公開中の映画を自主上映するなんて無茶ではないか等々、不安要素は増える一方。ハッキョ自主上映として企画し、ソンセンニムと子供達を招待したいので校長の許可を得て相談。するとなんと、昨年わが校に赴任された校長先生は、前に新潟で校長をされていたとき、震災後、福島の生徒達と合同授業をしていたときの縁でコマプレスと面識があるという。これを逃す手はない!早速連絡してくれるようお願いし、同時に私の方は昔の上司である「イオ」編集長が毎年大阪朝高ラグビー部を取材してきたのを思い出し、紹介してもらうことに。
しかし5月の時点ではまだ、コマプレス側に自主上映をするに当たっての準備が出来ておらずすぐに承諾してもらえたわけではなかった。でも私は、直接コマプレスの朴敦史君と話が出来て気持ちを伝えられただけで大満足大興奮?!これはいける!と更なる妄想を描いた。
運動会やヤユフェ(夜遊会)など、次々続く行事をこなしながら、そしてまだ上映OKの返事をもらえないまま会場探しや予算、宣伝方法など準備を進め、頭の中が上映会でいっぱいなのは私一人。そろそろ一緒に考えて進めてくれる、同じようにプレッシャーを抱えてくれるメンバーで動きたいという気持ちを機会あるごとに訴えたおかげで、朴君から「自主上映やっちゃいましょう!」と返事をもらえる頃には実行委員が決まり、少し肩の荷が軽くなったのは9月に入ってからだった。
もうあとはチケットを売りさばき、当日の段取りを決めるだけ。各自分担を決め、当日に向けての準備を進めた。昼と夜2回上映分のチケットは客席700中、ソンセンニムと子供達の招待分を除くと650枚で、収益は全てハッキョに渡すことを考えると完売が理想。ところがこの時点でたったの100枚しか売れてなかった。さぁここからが実行委員の腕のみせどころ!というわけで、結果上映1週間前には昼は半分以上売れ、夜の部は完売した。
一つには大阪朝高ラグビー部と交流の深い朝明高校ラグビー部員80名分のチケットを斉藤監督が快く買ってくれたこと、そしてもう一つはいつもハッキョのために協力してくださる日朝友好三重県民会議と三教組の皆さんのおかげだ。当日は、昼夜合わせて約440人が来場した。
今回2度上映するので、それぞれ舞台挨拶とトークショーをお願いしていたのだが、コマプレスの2人はさすがで、映画と共に日本全国行脚の旅をこなし大勢の前で話してきただけあり、映画の話だけではなくウリハッキョの良さを観客達に語ってくれた。昼の部では最前列に子供達が座っていたので、「ずっと日本学校に通って来た僕は、この映画で生まれて初めて朝鮮学校を知ることが出来た。夢は生まれ変わったら幼稚園からウリハッキョに通うことだ」。そしていろんなハッキョの子供達にのび太か名探偵コナン、ハリーポッターとあだ名を付けられると笑いを誘った。
私がなぜこの映画をみてもらいたいと思ったのか、それは、ウリハッキョはいいなーと思い出してもらうため。普通の高校生と何ら変わりないように見える朝鮮高校生が背負っているものの重さ、自分達のルーツを学んできたからこそ、それを受け止め自信につなげていること、ラグビーに勝つことは同胞のためになると誇りを持って闘っていること、だから強いんだということ。こんな風に子供が育つ場所、ウリハッキョ以外にどこがあろう。
翌日、ハッキョでの交流会で敦史君がこう言った。「ラグビーの精神は同胞の生き方と通じるものがある。ウリハッキョで学んでいるからこそ、彼らや君達の心の中にしっかりした芯がある」。時折映画に登場するラグビー部員のエピソードや、校内を見学して見聞きした四日市ハッキョの話題を交えながら、子供達からの質問に対する返事はニコニコと丁寧に、そして、優しいしっかりとした口調で答えてくれた。
朴思柔監督は始終「ソンセンニムもトンムたちもキラキラして素敵だ」とほめ、韓国と日本、ウリハッキョの教育を比較し、「映画を見た人から大阪朝高の強さの秘訣や大阪朝高に子供を転校させるにはどうすればいいのかとよく聞かれるのは、映画を見て皆がウリハッキョをうらやましく思うからだ、だからここは2つとない貴重な存在なんだ」と語り、最後に真剣な表情で、「ウリハッキョに通えば社会に出たとき必ずいいことが待っている」と、まるで悩んでいる彼らの心の中を見透かしたようにきっぱりと言い切った。
来春卒業を迎える6年生と中級部3年生の中には、日本学校を考えている子もいる。中には卒業を待たずしてそうする家庭もある。32世帯しかない中でこれはかなり深刻だ。そんな現状を知ってか知らないでか、子供達自身がウリハッキョを選べるように、自信を持てるように話してくれる2人を見て、私はようやくこの上映会をやって本当に良かったと思えた。ここにこそ意義があったのだ。
ただ皆に映画を見せることしか考えてなかった私は、こちらからお願いしたわけでもないのに2人が子供達に大切な話をしてくれたことに感謝し、驚いた。それは映画を通じてウリハッキョの良さをアピールする事が使命であるかのように見えたからだ。おそらくそう思って各地を回っているのだろう。
他のハッキョでもどんどん上映会をするべきだ。
映画だけではなく、両監督からの直接のメッセージが大人にも子供にも伝わるように。一人でも多くのトンポがウリハッキョの良さを再認識できるように。