沖縄知事選に辺野古の海を回想する
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16日に投開票された沖縄県知事選挙では、普天間基地の辺野古への移設反対を掲げた翁長雄志前那覇市長が、基地移設推進派の仲井真弘多知事らを破り初当選した。
投票率は64・13%で、前回の60・88%を上回った。知事選は現職の仲井真氏が移設推進を掲げて立候補したことから、移設の是非を巡るたたかいとなった。当選した翁長氏は、戦後69年たっても変わらない基地負担の中での辺野古移設を「沖縄への構造的差別」と位置づけ、「基地は経済発展の最大の阻害要因」と主張していた。次点の現職に、10万票近い大差をつけての勝利は、これ以上基地はつくらせないという沖縄の人々の意思表示を意味する。
初当選を決めた翁長氏は、「私が当選したことで基地を造らせないという県民の民意がはっきり出た。それを日米両政府に伝え、辺野古の埋め立て承認の撤回に向けて県民の心に寄り添ってやっていく」とのべた。新知事には政府による移設計画の全面廃止に取り組むことを期待したい。
とはいえ仲井真知事も、前回の知事選で県外移設を唱えて当選した。今回の選挙結果は基地移設計画に影響を与えるものではあるが、楽観はできない。国家権力の前に敗北した前知事の教訓を踏まえ、新しいリーダーと沖縄の人々とが、共に運動の大きなうねりを作り出してくれることを願う。
新基地反対を訴える辺野古住民の座り込み闘争は、10年にも及ぶ。
2年前の2012年6月、取材で辺野古を訪れた。台風の影響で座り込み闘争の拠点であるテント村は閉鎖されていたが、曇天の下、地元の運動家の方と海辺に並んで座り、荒れる海を眺めながら、辺野古での海上闘争について話を聞くことができた。当時、辺野古のテント村に自宅のある沖縄市から足を運んでいたその方(当時80歳)は、「基地問題は沖縄だけの問題じゃない。対米従属的な日米安保とそれを支えている愚かな国民の問題だ。誰も欲しがらない基地を押し付けるのは、明らかな沖縄差別だ」と話していた。
どこまでも青く広がる辺野古の海には、ジュゴンやウミガメが生息する。しかし私の記憶の中では今も、曇り空を映した灰色の海だ。(淑)