大阪朝高ラグビー部、引き分けによる抽選、に思う
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大阪朝鮮高級学校ラグビー部が出場した第94回全国高校ラグビー大会も7日、東福岡高校の優勝で幕を閉じました。決勝戦、東福岡が奈良県代表の御所実業を57―5と圧倒しました。今大会は東福岡の力が抜き出ていましたね。準決勝で東福岡に敗れた尾道は、前半を12―12と互角に戦うなど、本当に善戦したと思います。大阪朝高が東福岡と戦っていたらどのような試合になっていたかと考えずにはいられません。
ご存知のとおり、大阪朝高は2年連続のベスト8という素晴らしい成績を収めました。3日のこのブログでも紹介したとおり、準々決勝の対尾道戦は、引き分け(得点、トライ数ともに同じ)での抽選により、大阪朝高は残念ながら準決勝に進むことができませんでした。
改めて強調しておきますが、大阪朝高は「抽選で負けた」のではありません。引き分けたのだけど、どうしても次に進む学校を決めなくてはいけないので、それを抽選で決めただけなのです。
抽選で決めるというのは、ある意味、残酷なことではありますが、大会の規定なので仕方がないし、ある意味、ラグビーらしいと思います。サッカーのPK戦も残酷といえば残酷だと言えるでしょう。個人的に、抽選にそれほど違和感も抵抗感もありません。
花園の大会で、引き分けの場合に抽選になるというのは知っていたし、過去に何度か見てきました。しかし、大阪朝高の試合で引き分けになったのは初めてです。試合が引き分けになろうとするとき、横で写真を撮っていたRさんが「引き分けになったらどうなるんですか?」と訊いてきたけれど、その後のSNSの反応などを見ても一般的にはあまり知られていないのだとわかりました。
試合終了後、両チームのキャプテンと監督が抽選のために部屋に入っていきました。抽選はチームのキャプテンが行うことになっています。今回、おかげで具体的な抽選の方法を初めて知ることとなりました。方法はこうです。
まず、キャプテン同士がジャンケンをする→この勝敗で予備抽選の順番を決める→次に予備抽選をする→この結果で本抽選の順番が決まる→最後に本抽選をする→封筒が2つあり、次回出場権ありという内容が書かれている紙が入った封筒を引いたほうが次の試合に進出できる。
大阪朝高の李承記キャプテンがジャンケンでまず勝ちました。そして予備抽選の結果、本抽選の順番は大阪朝高が後で引くこととなりました。本抽選は、大阪朝高が残った封筒を選んだ(選ばざるをえなかった)わけです。その結果、尾道が次回出場権を得ることとなったのです。
これが、今回の抽選の様子です。李キャプテンは、封筒の中を見て何も書いていなかった瞬間、「目の前が真っ暗になった」と語っていました。
抽選が行われた部屋の前には、報道陣が30人ほど待ち構えていました。私もその中の一人でした。テレビカメラもあり、ライトが煌々と照らされていました。
しばらくして、ドアが開き、まず出てきたのは尾道のキャプテンでした。その表情が憮然としていたので、朝高が当たりを引いたのかと思いました。しかし、その後に出てきた李キャプテンの目が赤く腫れていたのを見て、一瞬、どっちなのかと戸惑っていると、「尾道が進出」というような声が聞こえてきのです。尾道のキャプテンが朝高を気遣っていたのがよくわかりました。
尾道高校ラグビー部のフェイスブックには、尾道のキャプテンが抽選後にロッカールームに戻った時の第一声が「朝高の分まで頑張ろう」だったというエピソードが紹介されています。また、「ベスト4ではなくベスト5だと思って朝高の分まで戦う」という決意のコメントも紹介されていました。
大会に取材に来ていたコマプレスの二人の朴監督から聞いた話ですが、昨年秋、尾道で「60万回のトライ」の上映会があったときに、尾道の選手たち十数人が観にきて上映後にはひとりずつしっかりと感想ものべていたそうです。
3回戦で対戦した茨城代表の茗渓学園も、昨年秋の水戸での上映会に監督・選手全員が訪れて「60万回のトライ」を観たそうです。コマプレスの朴監督は、どちらの試合も始まる前に、両チームにがんばってほしいと話していました。
抽選後、大阪朝高の監督とキャプテンはそのまま、選手たちのいるロッカールームへ。部屋からは選手たちの泣き声が大きく聞こえ、しばらくやむことはありませんでした。そんなに泣かなくても、と思うほどの泣き声だったのが、いま思い返すと、少しほほえましくなります。
今大会に出場した大阪朝高のチームは、昨年春から要所要所でのクジ運が良いのではと、個人的に思ってきました。今大会の組み合わせを見てもクジ運は悪くないと思ったのは確かです。
ところが、最後の最後のクジ運は良くなかった。
実は、尾道との試合直前、グラウンドで大阪朝高関係者と朝高のクジ運について雑談をしていました。それが、良くなかったのではないかと、ひそかに反省しています。
試合直後は、抽選で花園を去ることになったことを残念に思いましたが、大阪朝高ラグビー部のホームページにある試合に対する戦評を見ると(http://oskhrfc.d2.r-cms.jp/gamerugby_detail/id=907)、試合前半、得点すべきところで得点できなかったり、後半開始直後にミスから失点したりと、勝てる試合だったのに勝ちきれなかったことをきちんと総括しています。やはり、全国のトップグループにいるチームは違うなと感心しました。
選手たちが泣いていたのも、抽選に外れたからではなく、勝てなかったこと、引き分けにしかできなかったことが悔しかったからなのだと、改めて思いました。
最後に、前回(麗)さんがブログで大好きだと書いていた、大阪朝高の試合前の円陣の写真を掲載します。(k)