木漏れ日
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海外のブログに、「11Untranslatable Words From Other Cultures(翻訳できない異文化の11の言葉)」というタイトルの記事があります。日本語に訳している方がおり、たまたま目にしました。以下がその言葉たち。
1.ドイツ語:Waldeinsamkeit 森の中にひとりぼっちでいる気分
2.イタリア語:Culaccino テーブルについた冷たいグラスの跡
3.イヌイット語:Iktsuarpok 誰か来たかもしれないと思ってついつい外を見に行ってしまう気持ち
4.日本語:Komorebi 森林などの木立ちから太陽の日差しが漏れる光景のこと
5.ロシア語:Pochemuchka あまりにたくさんの質問をするひと
6.スペイン語:Sobremesa 食事を一緒にした相手と話し足りなくて、食後に話し込む時間
7.インドネシア語:Jayus あまりにも面白くないジョークを言うので、ついこちらが大声で笑うしかないような人
8.ハワイ語:Pana Po’o なにかを思い出そうとして思い出せない時に頭をかきむしったりする動作のこと
9.フランス語:Dépaysement なにか自分の国のものではないという雰囲気、感じ
10.ウルドゥー語:Goya いい話だけど信じられないという気持ち
11.スエーデン語:Mångata 月明かりが水面に輝いて道のようになっているさま
私のお気に入りは6と10です。しかし言語感覚が違うので、どのような使い方をすればいいのか判りません。現地では「ついSobremesaしちゃったね」とか「おぉ…それは…Goya」という風に話されているのでしょうか。外国の人々が「木漏れ日」という言葉を聞くと、自然を切り取る日本語の感性に驚くらしいのですが、私は3や11なんかも相当に瑞々しい発想だと思います。
大学時代、朝鮮語の原書で出会った文章に衝撃を受けたことがあります。そこには「今でも鮮明に浮かぶのだけれど、決して戻ってはこないということを知っている過去の思い出を振り返って切なくなる気持ち」が綴られていました(本が手元にないため正確に引用できないのが残念です)。私が感じたことのある気持ちと全く同じことを、ウリナラの作家が書いていたことに不思議な感動も覚えました。生活文化や価値観などが大きく違う場所でもやっぱり共通する感覚があるんだな、普遍的なものなんだ―。なんとなく嬉しかったです。
小さい頃、オモニの地元である東京によく遊びに来ていました。北海道とは比べものにならない程の暑さと人混みの中を、オモニに手を引かれて歩きました。駅のホームにある大きな広告の看板や、車窓の外に広がるビルだらけの景色を見るのが好きでした。ある日は、今まで行ったどの本屋よりも大きな本屋に連れて行ってもらいました。本の多さよりもフロアの多さ、全体が迷路のようなその建物に心を弾ませ、弟とかくれんぼや基地ごっこをして遊びました。
東京で暮らすようになって早7年。夏の暑さと人混みは嫌なだけだし、大きな看板や都会の景色はどんどん目の前を過ぎていきます。紀伊國屋書店の新宿本店に行っても今では「便利」と思うだけ。当時こういう気持ちだったということを懐かしく思い出しはしても、その時の感情がそのまま甦ることはもうありません。そうして、前述のなんともいえない切なさが残るのです。
そんな、「今でも鮮明に浮かぶのだけれど、決して戻ってはこないということを知っている過去の思い出を振り返って切なくなる気持ち」。これを表現する言葉は世界のどこかにあるのでしょうか。経験上、少なくとも朝鮮語と日本語にはなさそうですが…。もしくは、かなり妥協して「懐かしい」とか「大人になった」…? それでもやっぱりちょっと違うような。上の一覧を見ると、イヌイット語なんかにはありそうな気もします。(理)
遅レス失礼
諸民族語における独自の感情や状況を表現する言葉。
それはもういろいろとあることでしょう。
ですが、その語の意味するところが真に興味深く
着眼点としても唯一無二であろうというような言葉は、
しばしば北極圏や熱帯雨林や砂漠地帯といった
人間の生存にとって「極限」ともいえる自然環境の土地においてこそ、
よく見られるような気がします。
なぜなら、そこに住む者以外には決して知りえない生活体験がそこにはあるから。
このエントリを読んで思い出したのが
昔読んだ本多勝一氏の著書『カナダ=エスキモー』です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4022608021
数十年前から朝日新聞記者として「殺される側/殺す側の論理」について考察し
現在も『週刊金曜日』の重鎮としてご活躍の氏ですが、
『カナダ=エスキモー』は「本多流ルポルタージュ」の第一歩ともいえる著作です。
20年くらい前ならちょっとした本屋でも目にすることができたと思うのですが、
どうやら今では絶版(!)とのこと(朝日文庫)。
(理)さん、よろしければ本書をご一読ください。
そして本書を入り口に、本多氏の数々の労作にも目を通していただけたら幸いです。
Re:遅レス失礼
オタトンポさま
いつもためになるコメントありがとうございます!
さっそく興味がわきました! 事前にAmazonレビューをじっくり読むと、先入観を持ってしまうこともあるのであまりいいことではないと思いつつ、ちらちらと読んでみました。
また、図書館で予約して読んでみようと思います。