押収物なし、総聯議長宅に不当な強制捜索
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既報の通り、昨日午前7時過ぎ、在日本朝鮮人総聯合会中央本部の許宗萬議長と南昇祐副議長をはじめとする総聯活動家たちの自宅に対する、不当な強制捜索が敢行された。
容疑は「外為法違反」。同日警察当局は、2010年に朝鮮産の松茸を中国産と偽って不正に輸入したとして、東京・台東区の貿易会社社長を含む2名を逮捕した。今回の強制捜索は、この在日朝鮮人個人の会社の外為法違反と全く関係のない総聯議長らを恣意的に関連付けて強行された。明らかな政治的弾圧であることは言うを待たない。
副議長宅から押収した物は、事件と関係のない記念写真や副議長の妻のノートパソコン等で、議長宅にいたっては一点の押収物も見つからなかった。このことが、今回の強制捜索が事件と全く関連がないことを如実に示している。
同日午後、総聯中央は記者会見を開き、総聯中央常任委員会声明を発表。今回の強制捜査は、「朝鮮総聯に対する政治弾圧を狙った不当極まりない暴挙、在日朝鮮人に対する人権蹂躙と民族差別そのもの」であり、「今後の朝・日関係に深刻な悪影響を及ぼすであろう。その責任は、すべて日本政府当局が負うべきである」と糾弾した。
声明全文と、今回の強制捜索についての朝鮮新報の記事は下記の通り。
「不当極まりない暴挙」/総聯中央常任委員会声明発表
警察当局が総聯議長、副議長の自宅を強制捜索/『朝鮮新報』3月26日
私が、東京杉並区にある許宗萬議長の自宅に到着したのは、午前8時半頃。すでに多数の報道機関が詰めかけていた。
神奈川県警と京都府警、山口県警、島根県警の合同捜査本部警察隊は、約2時間にわたって議長宅を捜索。午前11時過ぎ、警察らが議長宅から、見るからに軽そうな段ボール箱を2箱運び出す様子が見られた。捜索に立ち会った弁護士によると、自分たちの荷物をわざわざ段ボール箱に詰めて行ったという。政治的パフォーマンス、警察の体面をつくろうためのポーズに他ならない。
捜索に立ち会った李春熙弁護士は、「2時間の捜索の結果、押収物は一点もなかった。容疑者の会社について議長は何もご存じない。全く関係がないにも関わらず、関連性があるとして捜索が行われた。これは明らかに刑事訴訟法に規定する捜索の要件を満たしていない。令状を発布した裁判所の責任も大きい。今回の警察のやり方は、在日朝鮮人にかけられた容疑に関しては、全て総聯議長に責任があるかのような立場で、明らかに不当で差別的である。捜索に入ることだけが目的、あるいは日朝関係になんらかの影響を与えようという目的でなされた捜索と見ざるを得ない。朝鮮総聯は、朝鮮民主主義人民共和国と日本に国交がない中で、日本における大使館的な役割を担っている。議長はその責任者であるから、本来は大使、外交官として最も尊重されなければならない立場であるにも関わらず捜索の対象となったのは、極めて遺憾だ」と、捜索の不当性について説明した。
このような在日朝鮮人や朝鮮総聯、傘下団体に対する弾圧は、これまでも執拗に繰り返されてきた。そのほとんどがまったく関係のないことでの強制捜索だ。
今回のような関連嫌疑という曖昧な口実での強制捜索は、国家権力による重大な人権侵害で、法治国家として決して許されてはならない不当行為である。違法的な捜索の加担者である裁判所もまた、断罪されるべきである。
また、李弁護士が指摘した通り、日本において朝鮮大使の役割を担う総聯議長への強制捜索は、朝・日関係を大きく阻害するものであり、関係悪化に対する日本政府の責任は免れない。(淑)